●2017年G1、棚橋が内藤にかけたテキサス・クローバー・ホールドの「美」と、長州力のスコーピオンに「耐える」猪木に共通点はあるのか?

末尾ルコ「プロレスの話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

新日本2017年G1クライマックス。
の試合の中で、内藤哲也VS棚橋弘至とバッドラック・ファレVS永田裕志を『ワールドプロレスリング リターンズ』で放送していたから観てみた。
バッドラック・ファレの下手なプロレスに関しては今更語るまでもないが、永田裕志の「白目パフォーマンス」はけっこう好きなので、その時間を楽しみに観戦することができた。
いわゆる「全盛期の永田裕志」はわたしの好みのレスラーではなく、なぜかと言えば、当人の外見や雰囲気とファイト内容がどうも釣り合ってない印象が強かったのだ。
当時の永田のキャラクターは、「新日正統派+UWF風」といったところで、要するにエース格だったのだと思うが、どちらかと言えば、脇で光るタイプだと思うし、UWF風の蹴りなどはどうもしっくり来なかった。
そんなわけで、エース格から降りた後の、「味があるキャラクター+白目」の方がずっと気持ちよく観ていられるのである。

一方、内藤哲也VS棚橋弘至は現在の新日本の黄金カードであるが、「いつもの展開」で、それは決してわたしの好みではないのだけれど、十分に観客を湧かせる、お金を取れるクオリティを発揮できることは誰もが知っている。
しかし同時に、「いつもの展開」だと、(ああ、よくやってるなあ)くらいの印象しか(わたしのような人間は)持たないのであるが、今回は(おっ!)というシーンがあった。
それは棚橋弘至が内藤哲也にテキサス・クローバー・ホールドをかけるシーンで、リング上には内藤の首から上しか着いてないほどの強烈な角度でのホールド状態がかなりの時間続いた。
この展開を観て当然思い出すのが、アントニオ猪木が長州力のスコーピオンズ・デス・ロックを長時間耐えるというシーンだ。
わたしの周囲には猪木がエビ反ったまま延々と耐えるシチュエーションに、(あれは、凄い!)と感心する向きもあったのだけれど、わたしはまったくノレなかった。
明らかにあの展開は、「自らの動きで観客を魅了できなくなった」時期の猪木が観客を湧かせるための苦肉の策として編み出した「耐え芸」だとしか思えなかったのである。
身体が動かなくなってからの猪木は「臭い芝居」ばかり目立つようになり、「スコーピオンに長時間耐える」もその一つだったと思うが、やはり「かつての猪木」を知っている人間にはまったくノレないものがあった。

しかし今回見た、「棚橋のテキサス・クローバー・ホールドに耐える内藤」という展開は、まず棚橋が「本当に苦しそうに見えた」し(多分、本当にキツかったのだと思う)、技をかける棚橋弘至の姿も美しく見えた。

と、たまには「今のプロレス」を讃えるのもやぶさかではないわたしです(←山田姉妹「みずいろの手紙」風に)。