●木も草もわんさかわんさかの我が庭の話から、昭和の恋愛スタンダード『ある愛の詩』、から、日本映画音楽の名曲は何か?

末尾ルコ「日常描写と映画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

庭の木や雑草を放置した状態で幾歳月、まださほどでもなかった頃に多少こまめに手入れをする習慣を実行しておればこれほど苦労することにはならなかったろうにと後悔するには遅過ぎるから、わたしはこう言おう。

「ガーデニングとは決して後悔しないこと」

・・・はい。昭和のある時期までは、「泣ける恋愛映画ならこれ!」と多くの日本人にとっても自動的に念頭に浮かぶ作品『ある愛の詩』の台詞「愛とは決して後悔しないこと」なんて、昨今誰も口にしないのである。
テーマ曲となったフランシス・レイの甘ったるいメロディはちょっとしたピアノ発表会はもちろん、日本全国どこでもかしこでもよくかかっていたものである。
しかし「愛とは決して後悔しないこと」というフレーズだけ読んでも何を言いたいのかピンと来ないはずだけれど、この台詞も多くの日本人が知っていた、「字幕翻訳の勝利だった」。

近年で映画音楽の大ヒットと言えば、『アナと雪の女王』が際立っていて、それより前となるとセリーヌ・ディオンが歌った『タイタニック』か。
かつてはヒット映画とテーマ曲は分かち難く結びついていたのだけれど、例えば、『太陽がいっぱい』や『アラビアのロレンス』、そして「ヒット映画」という範疇ではないけれど、『タクシードライバー』や『2001年宇宙の旅』、『時計じかけのオレンジ』など、「あの音楽」抜きでもそりゃあよくできた作品だけれど、やはり「音楽との連動」は映画の魅力を炸裂させる大きな要素である。
『ロッキー』ももちろんあのテーマは世界中で時代を超えて知られているわけで、わたしの弟の同僚など、いまでも『ロッキー』のテーマ曲で気合を入れてから仕事へ向かうらしい。

翻って日本映画に目を転じてみると、「映画音楽」が人口に膾炙して親しまれた例はあまり目立たない。
ちなみに「日本映画音楽 名曲」などで検索してみると、最近の映画で使われたJ POPの歌などがずらりと並んでいることが多いけれど、いや実際、(こらこら、違うだろ!)とツッコみを入れたくなるっちゅうもんだ。
「前前前世」が名曲とか、ちょっと気が狂いそうになるのだけれど、これはあくまで個人的意見である。

で、昭和の映画中心に思い返してみると、黒澤明の『影武者』や『七人の侍』で使われていた曲はインパクト抜群だった。
『砂の器』のテーマ曲もなかなかいいのだけれど、やや情緒的に盛り上がり過ぎる感がある。
武満徹が数多くの映画音楽を作ったのはもちろん素晴らしいが、「人口に膾炙」というのとは違うだろう。

というわけで、わたしは次の3本の映画のテーマ曲を挙げたい。

『犬神家の一族』(市川崑の1作目)
『人間の証明』(ジョー山中の歌)
『戦場のメリークリスマス』(坂本龍一のスコア)