●幼年時代のわたしは、なぜ玉虫より斑猫(ハンミョウ)を愛したのか?

末尾ルコ「幼年時代の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

わたしは子どもの頃から「世の中の風潮」にすぐ乗るタイプではなくて、いやそれが「偉い」と言ってるわけではないのだが、しかし(ちっとは偉い)と思わなくもないけれど、例えば、「スーパーカーブーム」や「インベーダーゲーム」などにはまったく乗らなかった。
「スーパーカーブーム」の時は高知にもどこか(笑)に「スーパーカーが来た」とか男子生徒は盛り上がっていて、わたしは(いったい、何がおもしろいのだろう)と不思議に思っていただけなのだけど、『サーキットの狼』という漫画を読んではいたので、「トヨタ2000GT」とか「ランボルギーニ・カウンタック」とか「ランチア・ストラトス」とか名前だけは知っていた。
わたしがプロレス開眼したのは小学高学年と遅く、それ以降は特に高校時代くらいまでプロレスのポジションはわたしの中でとても高かったが、それ以前は何をしていたのだろう。
保育園から小学低学年にかけて、さほど虫に詳しいわけでもないのに、「虫博士」と呼ばれていたわたしだから、虫捕りはやっていた。
しかし近所にはカブト虫やクワガタムシなどの高級感溢れる昆虫はなかなか現れず、それらが欲しければ、ちょっとした山間部まで行く必要があった。
自宅周辺でよく見かける虫は、蝉、キリギリス、コウロギ、カマキリ、そしてなぜか家の庭などには入ってこないけれど、少し近所の道路ではよく斑猫(はんみょう)を見かけた。
あるいは玉虫、カナブン、カミキリ虫などもちょいちょい見かけた。
法隆寺の玉虫厨子が本当に玉虫の羽根を使用しているなんてことを知ったのはずっと後のことだけれど、わたしはどちらかと言えば、玉虫よりも斑猫に高い価値を見出していた。
それがなぜかという疑問は、今しがた斑猫の画像を見てすぐに理解できた。
玉虫より斑猫の方がカッコいいのである。
玉虫の全体のフォルムはヌボーと長く、いかにも鈍臭い。
自慢の(笑)羽根の色も、綺麗と言えば綺麗だけれど、わたしにとってはやや鈍臭い配色に感じるのだ。
対して斑猫は、形態も身体の配色もシャープそのものの美がある。
メタリックな光沢を帯びた、青、緑、赤、橙、そしてデカいゴーグルのような複眼に、強靭な大顎・・・さらに「近づくと少しだけ逃げる」という幻惑的なムーヴ。
そうだ、わたしはこんな虫が好みだったのだ。