●小野寺昭=明智小五郎のドラマ『黒蜥蜴』にいきなり出てくる女性ヌードの時代、あるいは「明智小五郎に相応しい」俳優は?

末尾ルコ「エロティシズムの話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

高校時代、通っていた鈍臭い進学校に、漫画『Dr.スランプ』の「則巻アラレ」のコスプレまがいの格好で学校へ来ていた女生徒がいて、(何を考えているんだ)と思ったものだが、少なくともわたしは「則巻アラレ」に「女」を感じることはない。

などということも人生の中の一コマではあるが、それとは関係なく、最近どこかのBSチャンネルで江戸川乱歩原作『黒蜥蜴』の2時間ドラマを放送していたのでちらっと観てみた。
これは小野寺昭が「明智小五郎」を演じ、「黒蜥蜴」こと「緑川婦人」を島田陽子が演じた作品だ。
本当は「闇を生かす」ことが難しい作品で江戸川乱歩物を映像化するのは難しいし、同ドラマもセットや衣装がいかにもショボく、江戸川乱歩が描く「出鱈目なゴージャス感」がまったく出ていない。
島田陽子は上手に撮れば、「黒蜥蜴」感が出てくることは可能だったのだと思うけれど、なにせ映像が「カラオケビデオ」っぽいのであって、「妖しさ」など出ようにもない。
予算がなく、製作日数も十分取れないのであれば、もっとキッチュでパンクな作りにすればおもしろくなると思うが(『月曜ドラマランド』のように)、普通に撮って(ゴージャスだと思ってください)と無言で訴えかけられても(笑)なかなか無理なところである。

まあそれでも島田陽子はいいとして、小野寺昭の「明智小五郎」がものの見事に『太陽にほえろ』の「殿下」である。
ひょっとしたらスタッフが、「小野寺さんは殿下は一心同体なのだから、それでやっちゃいましょう!」と進言したのかもしれないが、そうとしたらそこをもっと強調してギャグドラマにした方がよかった。
なんて感じる視聴者はそんなに多いわけではなく、ひょっとしたら「わたしだけ」かもしれないが、少なくとも「小野寺昭=明智小五郎」に納得した原作読者はいないだろう。
とは言え、映画、テレビドラマで数々の俳優が明智小五郎を演じているが、そしてそれらをすべて観ているわけではないけれど、今までに(これは小五郎だ!)と満足できた俳優はいない。

とは言え、子どもの頃にほぼ読破した江戸川乱歩作品の中の明智小五郎像はわたしの中で勝手に増幅して創作されており、実は今まで演じた俳優の中に案外「相応しい人」がいたのかもしれない。

ところで小野寺昭=小五郎の『黒蜥蜴』なのだが、冒頭から女性の裸体が普通に現れる。
(あれ、当時のドラマってこんなだったのかな?)と首を捻るほどの大盤振る舞いなのだが、エロ情報は基本的にエロ本やポルノ映画館などでしか手に入れられない時代、多くの男性にとってはテレビドラマのヌードでも、「砂漠の中のオアシス」のようなものだったのだろうか。