●「好きな日本人男優は?」という問いかけから、『この首一万石』の大川橋蔵、そしてテレビ時代劇についてまで語るよろし。

末尾ルコ「映画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

「好きな俳優」、しかも「男性」、さらに「日本の」と、つまり「好きな日本人男優」の話なのだけれど、もうかなり前から子の問いに対して即座に浮かぶのが、市川雷蔵と松田優作である。
二人とも若くして死去しているが、だから好きなのではもちろんなくて、たまたま大好きな日本人男優の二人が若くして亡くなっているのである。
もちろん市川雷蔵の場合、その存在を知った時には既に死んでいたのであり、その点、松田優作は『太陽にほえろ』のジーパン刑事に子どもの頃惚れ込んでい以来である。
とは言え、「ずっと熱心な優作ファン」だったわけではなく、途中ほとんど意識しなかった時期もあった。
例えば、村川透監督と組んだ『遊戯』シリーズは、優作ファンにとってはとてもおもしろい映画なのだが、ファンでなければどれだけ愉しめるのだろうかという疑問は常にある。
ただ、松田優作出演映画は、『ブラック・レイン』『陽炎座』など大好きな作品も多く、ハリウッド映画の中で『ブラック・レイン』の優作のような圧倒的迫力は、渡辺謙でも無理だなと、今後も出ないなという思いはある。

などと書いているのは、BSプレミアムで大川橋蔵主演の『この首一万石』と『炎の城』を放送していたので鑑賞したからで、大川橋蔵と言えば、名前は知っているけれど、「すごく古い人」というイメージを持ち続けていたのだが、生年月日をチェックすると、1929年生まれで1984年没と、ぜんぜん「古い」人ではない。
市川雷蔵が1931年生まれで1969年没だから、同世代である。
それにしても雷蔵の37歳没も若いが、大川橋蔵の55歳没もとても若い。
ただわたしは、「若過ぎる」という表現、まったく使わないことはないけれど、好きではないのだ。
誰かの詩に対して、「若過ぎる」とか「大往生だった」とか、ワンパターンで決められるものではない。
「早く死んだ人」はもちろん「無念」の想いで旅立った人が多かろうけれど、決して「敗北者」ではないのだ。

「生と死」については、わたしの最大のテーマであり、もちろん折に触れてお話し、問題的もさせていただきます。

で、大川橋蔵の話に戻るけれど、何と1966年 ~1984年の長期に渡ってテレビドラマで『銭形平次』をやっているのね。
もちろんドラマ『銭形平次』とそのテーマソングは知っていたけれど、ほとんど観たことがなく、だからそんなに長い間、大川橋蔵がやっていたことも知らなかった。
民放テレビドラマの時代劇はほとんどが予定調和の魅力であって、その中でどの程度のクオリティを創り上げられるかがポイントだと思うけれど、近年はテレビ時代劇も見当たらなくなり残念なことである。
わたしは『大河ドラマ』の制作姿勢には大いに不満があり、それよりも予定調和の民放時代劇の方が好きなのだ。
が、現在BSの番組欄を見ると、かなり多く昭和の時代劇を放送しているので、ちょくちょくチェックしてみようと決意した寒空の2月であった。