●わたしのプロレス超ビギナー時代、血に染まる「白覆面の魔王」ザ・デストロイヤー。

末尾ルコ「美とプロレスの話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

わたしがプロレスファンになったのは小学時代、初めて『全日本プロレス中継』を観た「衝撃」は今でも新鮮だ。
(この世界にこんなおもしろいものがあるのか!!)
そのプロレス初体験のカードやどのレスラーが出ていたかははっきりと覚えてない。
子どもの頃からよく日記を付け始めはするのだけれど、続いた例がなかったのが惜しい話だ。
今では毎日複数のノートや手帳に書きまくっているというのに。
しかしプロレステレビ観戦初回か2回目に、ザ・デストロイヤーが出ていたのは間違いない。
もちろん『全日本プロレス中継』であるから、ジャイアント馬場派出ていたろうし、ジャンボ鶴田も試合をしていた可能性もある。
しかし他を圧して心に残っているのが、ザ・デストロイヤーなのだ。

当時のザ・デストロイヤーは既に「日本側」の一員として戦っていた。
まだ「白覆面の魔王」とは呼ばれていたが、和田アキ子やせんだみつおらとお笑い番組にも出ていた人気者になっていたはずだ。
わたしがそうしたバラエティ番組を観ていたかどうかの明確な記憶もない。
ではどうしてザ・デストロイヤーは、プロレス初心者のわたしの心に荒々しいまでに焼き付いたのか。
一つは「覆面レスラーだったから」・・・これはもちろんある。
「覆面をした人」が特撮ドラマでなく、「現実のリング上」に現れて試合をする。
小学生のわたしには想像もつかない事態だったし、それだけで心はワクワクした。
しかし「それだけ」ではなかった。
ザ・デストロイヤーが誰と対戦していたかはもちろん覚えてないが、間違いなく「ヒール」と試合していたはずだ。
なぜならば戦いの最中、デストロイヤーの白覆面の前頭部が、見る見る血に染まってきたのだから。
相手レスラーはきっと凶器攻撃を加えたのだろう。
ひょっとしたら、「鉄柱攻撃」をも試みたのかもしれない。
しかし小学時代の、しかもプロレス超ビギナーのわたしはその「血」に魅了された。
「善玉」であるザ・デストロイヤーが「悪役」の理不尽な攻撃を受け、まずその額に小さな赤い滲みが生まれ、それが見る見る前頭部から目の辺りにまで拡がっていく。
何という魅惑的なヴィジュアルだったのだろう。
そしてもちろん「我らが」ザ・デストロイヤーは、血に染まりながらも「悪」に対して果敢な戦いを続けるのである。