●優雅なメドベージェワVSボリショイ・バレエなザギトワ、あるいはべレズナヤ、デニス・ビールマンの記憶、はたまた「二重関節」。

末尾ルコ「スポーツの話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

平昌オリンピックの中継は女子フィギュアだけを観たわたしだが、なぜそれだけ観戦したかと言えば、日本の宮原を熱烈に応援するため・・・ではなくて、ロシアのエフゲニア・メドベージェワが金メダルを獲るか否か、と言うよりも、女子フィギュア史上でも圧倒的成績を出し続けるメドベージェワがどのような演技をするか観たかったのが一番の理由だった。
ところが観戦前に(他の選手の動向は・・・)と軽く予習していると、同じくロシアの「アリーナ・ザギトワ」という15歳が「凄い技を繰り出す」的情報がいっぱいではないか。
(これは、おもしろい!)と俄然盛り上がったわたしです(←山田姉妹「みずいろの手紙」風に)。
もうかなり以前から日本国内のフィギュアスケート人気はおそらく世界一と言ってもいい状態だと思うけれど、わたしとしてはしょっちゅう中継があるし、ここでもまたその放送の演出が気色悪いことが多く、すっかり食傷気味で興味を失っていた。
わたしにとって、「最も美しいフィギュアスケート」は、ロシアのエレーナ・べレズナヤ&アントン・シハルリドゼのペアであるが、フィギュアスケート自体を意識したのは、幼いころに父が熱烈に語っていたジャネット・リンである。
ジャネット・リンは札幌冬季オリンピックで銅メダルを獲得したのだが、演技中に「こけた」にもかかわらず、終始笑顔を絶やさなかったことで人気、特に日本で炸裂!
わたしの父も随分熱を入れていたのだが、わたし自身はそのシーン、子どもの頃に見た記憶はない。
わたしが印象に残っているフィギュア女子選手の一人がデニス・ビールマンで、言わずと知れた、「ビールマン・スピン」のオリジナル選手である。
「二重関節」など、特殊な身体能力を持っていなければ成しえないとされるビールマン・スピンも昨今は男子を含めてけっこう多くのフィギュア選手が見せるようになっているが、初めてデニス・ビールマンがやった姿は感動ものだった。
しかも160㎝でバランスの取れた美しい姿態だったから、まさに氷上に大輪の花が咲いたかのようだった。
そう言えば、アントニオ猪木の「二重関節伝説」というのもあるのだが、それはさて置き、結局アリーナ・ザギトワが金メダルを手にした平昌オリンピックだけれど、優雅さ、美しさではメドベージェワに分があったと感じた。
ただ、アリーナ・ザギトワが演技をスタートさせた瞬間からの腕の動きは、まるでボリショイ・バレエのオルガ・スミルノワのようであって、外連味たっぷりのムーヴマンは、時に長いと感じさせるフリーの時間もアッというまに過ぎさせてしまった。