●2018年日本アカデミー賞、蒼井優のスピーチと、菅田将暉の圧倒的才能。

末尾ルコ「映画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

今年の日本アカデミー賞、最優秀主演女優賞が蒼井優、最優秀主演男優賞が菅田将暉ということで、「獲るべき人が獲ってよかったな」と。
蒼井優がデビュー以来日本映画界にどれだけ貢献していたかは計り知れず、しかし『フラガール』以来はあまり大きな賞と縁がなかっただけに、「蒼井優」という稀有な女優のモチベーションがこの受賞によってさらに上がれば映画ファンとしては嬉しいことである。

菅田将暉の才能については、「驚くべき俳優」と言う外はなく、デビュー当初は『仮面ライダー』シリーズへ出ていたというが、芥川賞小説『共喰い』の映画化へ主演して以降の怒涛の進撃は脅威としか言いようがない。
アート映画、バイオレンス映画などに軸足を置きながら、メジャーなアイドル的人気も広く獲得し、しかも非常に高い評価を得てきた俳優は、ここ20年くらいを見ても、菅田将暉ほどの人はいないだろう。
浅野忠信がが意外作品を含めて圧倒的な実績を残してきながら、現在国内でやや苦しんでいるのは、「単館系インディ映画の神」という不動の地位を手にしながら、思いのほか「日本の一般層」にその存在と価値が知られてなかったことが大きな理由の一つである。
その意味で、菅田将暉のような活躍ぶりは、「凄い」としか言いようがなく、「これからの日本映画」を考える上で、まさしくトップランナーである。

『女性自身』のサイトによれば、蒼井優が日本アカデミー最優秀主演女優賞獲得のスピーチとして語った次の言葉が多くの人たちに好意を持って受け取られているという。

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(『女性自身』のサイトより)

「この映画を撮っているときに、本当に映画の現場に入れてよかった、映画界に入れてよかったなって思ったんです。なのに、こんなに大きな賞をいただいてしまって恐縮しています」

「これから新学期が始まりますけど、学校がつらい方、新しい生活どうしようと思っている方はぜひ映画館に来てください。映画館ってよくないですか?私ほんとに好きなんです。みなさんと一緒に映画界を盛り上げていきたいです」。

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そう。映画館って、いいんですよね。
もっともわたしも、10代とは比較にならないほど映画館へ足を運ぶ頻度が減っていて、(蒼井優にあわせる顔がないなあ~)の世界であるが、ただ、(映画館っていいなあ~)と寛げる映画館が少なくなっているのも事実。
シネコン系が嫌いなわけではないのだけれど。

ところで日本アカデミー賞だが、設立当初は黒澤明にシカトされるし、わたしたち映画ファンの間でも、(日本アカデミー賞、冗談は吉田茂!)の世界だった。
ところが続けるものである。
今や日本アカデミー賞よりもずっと古くからやっていた映画賞よりも明らかに「映画関係者にとっても、世間的にも〈意義ある賞〉」となっている。
かつて日本アカデミー賞などよりずっと世間の注目を引いていた各種音楽賞の衰退とは真逆の流れになっている。

このあたりも今後のテーマとして深めていきたい。