●汚い!不細工!めちゃめちゃダサい!なのにとってもおもしろい!!昭和のエネルギー『包丁人味平』の世界。

末尾ルコ「漫画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

本日アップの予定だった『包丁人味平』の記事を間違って昨日一瞬(と言うか、数時間 笑)アップしてしまって、既に読んでくださった方もいるだろうから、ジャネット八田のお話も付け加えてみようと、意味不明のことをするわたしです(←山田姉妹「みずいろの手紙」風に)。

『若さま侍捕物』のヒロインとしてジャネット八田が出演したいたのだが、あまり観た記憶はないけれど名前はよく知っていると思ったら、この人、田淵幸一と結婚していたのですね。
(ああ、なるほど)という感じ。
しかしジャネットのキャリアを見てみると、時代劇が多いのですな。
ポーランド系米国人の父親とのハーフだというが、外見的にも台詞回しも時代劇向きとも思われないのだが、そのあたりはどうだったのだろうか。
なんてことを平成30年に考えてみるのもオツなものである。


さて(笑)、BOOK OFFで気まぐれに『包丁人味平』を108円で手に入れたが最後、読み始めたらとまらないのである。
原作が牛次郎、漫画がビッグ錠の『包丁人味平』はかつて『少年ジャンプ』に連載されていた。
今の漫画もそうかもしれないが、昭和の漫画の多くは子どもの頃に読んでしまうと、「障害常に念頭に上る」インパクト抜群の作品が多い。
まあこれはわたしは「今の漫画」をもう子どもの頃に読むことはできないから比較はできないけれど。
もちろん「子供の頃にいたく盛り上がった漫画でも、大人になって読み返すといささかショボい」作品も少なからず存在する。
「ショボい」とまではもちろん言わないまでも、子どもの頃は(こんなにすさまじい漫画が存在するのか!)とカリスマ性さえ感じていた永井豪の『デビルマン』と『バイオレンスジャック』。
数年前に久々に読み返してみたのだが、「素晴らしい!」、けれど、「けっこう物足りない」という感想だった。
その理由はやはり、「画」にある。
いや、もちろん永井豪の画は素晴らしい。
が、現在のあまりに多様な漫画表現があふれかえる中では、『デビルマン』や『バイオレンスジャック』の壮大な世界観を描くための「画」としてはかなり物足りないのだ。

では『包丁人味平』はどうだったか?
『デビルマン』などと違い、子どもの頃におもしろく読んではいたが、そこまで熱中したわけではない。
しかしそのインパクトはわたしの中にずっと刻印され続けている。
結論から書こう。
『包丁人味平』は、今読んでもぜんぜんOKなのである。
なぜか?
なにせエネルギーが凄まじい。
美形キャラクターも美少女キャラクターも一切出てこない。
そもそも「画事態」が一見小汚い。
登場人物たちの中に、「カッコいい」人間も存在しない。
それどころかほとんどのキャラクターの基本姿勢が中腰で、あたかも「カッコいい人間など書いてはならない」と漫画家が自らを戒めてさえいるようだ。
登場人物のほとんどが「不細工な顔」であるうえに、主人公の「塩見味平」でさえも、常に小汚い恰好をして、小汚い部屋に住んでいる。
しかしおもしろい。
次から次へとページを捲りたくなるエネルギーに満ちている。
味平の「ライバル」を含め、脇のキャラクターも濃く、不細工で、しかも強烈にして猛烈だ。
「包丁貴族」(笑)の団英彦、「無法板の練ニ」(笑)こと鹿沢練ニ、「カレー将軍」(笑)の鼻田香作・・・。
とりわけ「カレーによる世界征服」(笑)を企む鼻田香作のブラックカレー(麻薬入りカレー)を一度見て、どうして忘らりょうか!

昭和のエナジー、恐るべしである。