●なぜか夢に広瀬すずが出てきたこととはまた別に、映画『社長道中記』の心地よいギャグ。

末尾ルコ「映画と夢の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

「最近よくない夢しか見ない」なんて記事を書いた数日後、夢の中に広瀬すずが出てきた。
特に広瀬すずのファンではないが、夢に出てくる分には悪い気はしない。
だから「広瀬すず」登場は、数年ぶりくらいに見た「いい感じの夢」かもしれない。
ところが夢の中の広瀬すずが何をしていたかまではまったく記憶にない。
わざわざ出てきたのだから、「何かしていた」に違いなはずなのだが、いったい何をしていたのだろう。
そしてわたしの夢なのだから、普通はわたしも出ていたはずだ。
そして普通わたしは「夢の中のわたしの顔」の姿を確認できない。
わたしの視線は一人称で、それは現実生活のわたしが直接わたしの顔を確認できないと同じことのようだ。
しかし「常にそうなのか?」と問われれば、わたしは明確な解答に窮する。
生まれてから今までそれこそ無数の夢を見てきたわけであり、そのすべてがどうだったか
なんて、確認できるはずもない。

そんな春のある日、わたしは『社長道中記』を観た。
森繫久彌主演の社長シリーズである。
調べればこの作品、黒澤明の『用心棒』と同時上映で公開されたそうだ。
わたしが子どもの頃も、まだ新作映画の公開は2本立てが普通だった。
メインの映画に加えてもう一本の作品、そのもう一本が誰かの人生を変えることもある。
残念ながらリアルタイムで知っていたわけではないけれど、『カッコーの巣の上で』の同時上映が『アデルの恋の物語』だったり、あるいは『エンゼルハート』と『プレデター』が併映だったりとか。

『社長道中記』は、森繁久彌が好色な社長を演じている。
この好色社長が旅館の部屋に女性マッサージを呼ぶ。
しかし秘書(小林桂樹)は社長夫人に「夫に女を近づけるな」と命じられており、それを守るために、男性按摩と交換する。
男性按摩は社長に対し、逆片エビ固めやチン・ロックのような体勢の按摩を行使する。
そして、「元プロレスラーなんで」と告白。
こういうベタで馬鹿なシーンを、ちょい一流の俳優たちが演じることでおもしろみが倍加している。