●『避暑地で魔が差して』で「おっぱい(←敢えてこの言葉を使ってます)ポロリ」、ローラ・ル・ランのエロスと比べたら、杉本彩の『花と蛇』は

末尾ルコ「映画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

『避暑地で魔が差して』という映画があって、ヴァンサン・カッセル、フランソワ・クリュゼというフランス映画界の大御所二人が主演だ。
バカンスでコルシカへ滞在しに来た中年男性の親友二人。
どちらも十代後半の娘を連れてきている。
ところがフランソワ・クリュゼ演じるアントワーヌの娘ルーナが、ヴァンサン・カッセル演じるロランに対して男性としての興味を持ち、積極的に誘惑を初めて・・・。
というストーリーで、男のフェロモン衰えずのヴァンサン・カッセル相手であれば、ハイティーンの娘が興味を惹かれてもむべなるかなという説得力はもちろんあるのだが、親友の娘であるルーナが自分を誘惑するなんて(とんでもない!)とカッセルは拒絶するのだけれど、ルーナを演じるローラ・ル・ランが魅力的で間もなく「カッセル、陥落」となってしまうあたりも説得力がある。

で、作品中、ロランがルーナにグッと、性的に惹かれるシーンの一つがあって、とても上手いなと感じた。
それは、

「波打ち際で遊んでいるルーナのビキニがずれて、右のおっぱい(←敢えてこの言葉を使っています)がポロリと露出してしまう」

というシーンだ。
もちろんルーナを演じるローラ・ル・ランが大人の魅惑も兼ね備えた少女であるからこそのシーンではあるが、下手くそなラブシーン、ベッドシーンなどよりも遥かに扇情的であり、誘惑を拒絶していたロランが落ちてしまう過程としては実に説得力があった。

どのような状況を目の当たりにすると性愛的欲情が沸き上がるかはもちろん人それぞれに違いないけれど、

「思いがけず、着衣がずれる、その結果として通常は隠れているべき部分が露出してしまう」

という状況のエロティシズムは、どちらかと言えば日本人が得意としていた感覚だと思うのだが、フランス人にもそうした感覚があるどころか、映画の中で巧みに使われている。
逆に日本映画ではついぞ(ほう、これは・・・)というエロティックなシーンにお目にかかることはない。
そもそも心地よいエロスを感じさせる女優などほとんど見当たらない現状であるし、「壁ドン」なんていう幼稚でしかもDVな行為を有難がっているようでは、本当にクオリティの高いエロティックな映画などできるはずもない。
例えば団鬼六原作の『花と蛇』の主演が杉本彩だったのだけれど、これなんかもう、「全然、違う!」と叫びたいくらいだった。
(え?この人が?)という意外性が日本的SM世界のエロティシズムなのに、杉本彩のように最初から「あからさま」な女優をキャスティングしていてはダメなのである。