●ハーリー・レイスとデイック・ザ・ブルーザーは185cmではない?「肉体論」への段かい。

末尾ルコ「プロレスと肉体論の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

ハーリー・レイスの身長を調べると、普通は「185cm」と出ている。
デイック・ザ・ブルーザーの身長も同じく、「185cm」と出ている。
同じ身長である。
次の動画を観てみると、ハーリー・レイスの中にデイック・ザ・ブルーザーがずっぽり入りそうなくらい体格に差がある。

Harley Race vs Dick The Bruiser WWA All Star Championship Wrestling
https://www.youtube.com/watch?v=TsZJYtN-B7I

ハーリー・レイスのヘアスタイルと髭の伸ばし具合から考えて、この試合は少なくとも1977年以降。
80年以降という可能性も十分あり得る。
デイック・ザ・ブルーザーは1929年生まれで1991年に死去しているから、この試合当時は50歳前後か。
ブルーザーは1985年引退とされているので、引退間際の試合とも考えられる。
いずれにしても、ブルーザーは全盛期を遥か過ぎた時期の試合で筋肉の盛り上がりなどは大きく減退しているはずだけれど、年齢的に身長まで縮みはしてないだろう。
ハーリー・レイスが185cmと仮定すれば、ブルーザーの身長は175cm強程度か。
しかしレイスの185cmもサバを読んでいるとすれば、いったい二人の体格は・・・と迷路に嵌ったようになるのがプロレスのおもしろさか?

ただ、プロレスラーの身長に関して言えば、あるいは他のスポーツにも同じような傾向があるかもしれないが、(あ、「プロレスはスポーツじゃない!」なんてツッコんじゃだめですよ、大づかみなお話をしているのだから)「大きければいいというものでもない」点にも注目したい。

もちろん、「プロレス」という興行形態を考えれば、「巨体」は絶対的に有利である。
2mを超す巨体レスラーがリングで暴れるとなれば、それだけで一定以上の集客が期待できる。
どのような分野であっても、わざわざ劇場や会場に足を運び、お金を払う観客の期待は「非日常の体験」だろう。(日本の場合、「親しみやすさ」を重んじる人たちが多く、必ずしもこの図式が当て嵌まるとは限らなくなっているが)。
日本プロレス史に燦然と輝くアンドレ・ザ・ジャイアントVSスタン・ハンセンの一戦はまさしくそんな「巨体プロレス」の象徴的試合だった。
人間の身体だけであんなド迫力、他のスポーツでも表現分野でもまずあり得ない。
しかし多くのプロレスファンが「自己投影」できる、あるいは(あんなレスラーになってみたい)と思うのは巨漢レスラーではなく、「そこそこの体格のレスラー」なのだ。
全盛期のジャイアント馬場は凄い、馬場を観るために観客が押し寄せる・・・しかし「馬場のようになりたい」と憧れる少年ファンは必ずしも多くなかったのではないか。
そこもファン心理のおもしろいところでもある。