●ワールドカップロシア大会、日本、ベルギーに敗退・・・よりも問題の、いつもながらのヒステリックなスポーツ熱狂の危うさ。

末尾ルコ「社会観察で、知性と感性を鍛えるレッスン」

高知放送に『高知eye』という午後の情報帯番組があって、その中でメイン司会者と言えるのが、高橋生という高知放送アナウンサーです。
高橋生と書いて、「たかはしなる」と読ませる珍しい名前ですが、丸顔で(番組上は 笑)いつも明るく元気一杯で、わたしの母のお気に入りとなっています。
その高橋アナがワールドカップ 日本VSポーランド戦の前だったか、あるいはVSセネガルの前だったかもしれないが、「この前の試合は途中で眠っちゃったので、今度は最後まで観るようにしなくちゃ」的な話をしていた。
あくまでわたしの想像だが、高橋生はサッカーにさほど興味がなく、職場の雰囲気で(観る必要がある)という状況になってしまっているのではなかったか。
少々夜遅くても、朝早くても、本当に好きなものであれば、そうは眠くならない。
わたしがテニスのシモナ・ハレプの試合を見ている時に眠くなるはずもないように。

そもそも日本にサッカーファンとはどのくらいいるのだろう。
「サッカーファン」とは言うまでもなく、「常日頃からサッカーに強い興味を持ち、試合や選手の動向を追っているファン」を指している。
もちろん全スポーツの中では多い方であることは間違いない。
中央調査社が今年発表した「日本人の好きなプロスポーツ」ランキングによれば、いまだ1位は野球であって、その後に、サッカー、大相撲、テニス、ゴルフと続く。
さらにランキングを追えば、ボクシング、バスケットボール、カーレース、プロレスとなっている。
しかし野球とサッカーの間にはまだかなりの差があって、はっきり言って、その野球でさえわたしの周囲には「熱心なファン」という存在はほとんど見当たらないし、特に若い人の間では興味は薄い。
プロサッカーはそんな野球よりも「ファン」の数はかなり下回るし、地方ではその傾向がさらに顕著となる。
サッカー文化が社会に定着している欧州や中南米と違い、日本ではまだまだ「それほどでもない」状態なのがサッカーというスポーツに対する関心なのだと思う。

ところが4年に一度の『ワールドカップ』となると、いきなりサッカーは超人気スポーツとなる。
そこがわたしには不思議でならない。
『ワールドカップ』というスポーツイベントの凄さは理解している。
それにしても、「普段興味を持ってないスポーツ」に対してヒステリックなまでの声援を送ることがどうしてできるのだろうか。
そして問題となったポーランド戦、20分間の日本の「敗退行為」はプロスポーツという観点から見れば大きな批判を受けて当然だと思うが、そしてもちろん日本国内にも「サッカーファン」を中心に批判してた人も少なくないが、マスメディアの多くは「かばう」あるいは「見て見ぬふり」をするし、ネットの書き込みを見ても、ヒステリックな擁護に溢れていた。
便乗して目立とうとした芸能人・著名人も多く、橋下徹などは、件の采配を批判する人間を「頭が悪い」とまで断言する。
まあいつもながらのお家芸ではあるけれど。
そしてベルギー戦を前にして、テレビでは「サッカー専門家」とされる人たちが、わたしが見た範囲ではずらずらと「日本の勝ち」を予想していた。
(それは予想じゃなくて、願望でしょう!)と子どもでも分かることなのだけれど。
まあ他にもいろいろと「今の日本人のメンタリティ」が浮き彫りになった感があり、今後も思考を深めていきたい。