●1957年、力道山VSボボ・ブラジルこそ、「想像する贅沢」を味わえるプロレスだ。~綾瀬はるか『義母と娘のブルース』を一回で観るのを止めた理由。

末尾ルコ「プロレスの話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

平成も昭和もプロレスファンはリング上あるいはリング外で展開されるプロレスを観ていることには違いないけれど、

「観ようとしているもの」
「期待しているもの」
「実際に観ているもの」
「観た上で、心の中に生じるもの」などは、

確実に異なってきている。

しかし考えてみれば、プロレスの試合が行われる会場へ行き、安くないお金を払って試合を観ていることには昭和も平成も変わりはない。
観客が「そこ」へ足を運ぶのは、「よほどのこと」を観られると信じているからだろう。
その「よほどのこと」の内容がどんどん変わってきているのか。
それはプロレスに限ったことではない。
ステージパフォーマンス全般に言えることだし、映画にしてもそうだろう。

力道山VSボボ・ブラジルの映像がある。

力道山vs.ボボ・ブラジル(JWA・1957年8月14日)
https://www.youtube.com/watch?v=9NGjO4_JPbs&vl=ja

30分強続いた試合を10分程度に纏めた映像だ。
力道山の空手チョップとボボ・ブラジルの頭突きが真っ向勝負する観応えある展開である。
何よりもブラジルの、理想的戦士のブロンズ像のような体格が凄いし、短い距離から当てくる頭突きによって力道山が崩れていく姿がリアルである。
そして試合は1本目でボボ・ブラジルが試合放棄をしてしまう。
ブラジルにはさしたるダメージはなさそうだし、試合も押し気味に見えた。
力道山は額から出血・・・まるで流血する力道山を嫌うかのようにブラジルはリングから去っていく。
しばらくして呼び戻されたブラジルだが、既にリングシューズは脱いでおり、「二本目」もほとんどファイトせずに試合放棄…大観衆の目の前で、である。
何と不可解な、何と魅惑的な試合だろう。
内藤哲也の言うところの、「想像するのはプロレスファンにとって一番贅沢な時間」という言葉を嘲笑うかのような、「想像せざるを得ない」展開。
しかしそれは、力道山とボボ・ブラジルという千両役者だからこそ成立しているとも言える。

・・・

7月スタートの民放地上波テレビドラマをいくつか観ているが、とてもじゃないが3か月通して観たくなるようなものはない。
例えば『義母と娘のブルース』は綾瀬はるかと竹野内豊共演で、それはなかなかいい顔合わせなのだけれど、「娘」とうのがミソで、いずれ子役のワザトラ演技が炸裂すると予想され、1回分で止めた。
まあ、「このごろの俳優の顔を確認する」くらいの気分でいくつかのドラマを1話分だけ観るという方法もありかな、と。
例えば、『探偵が早すぎる』を観て、今まで曖昧だった「広瀬アリス」の顔がよく分かった・・・というように。