●映画『ぼくのおじさん』の、いささか筋張った真木よう子を観て、『獄門島』の坂口良子の魅惑がさらに引き立つ。

末尾ルコ「映画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

『ぼくのおじさん』という映画があって、監督は山下敦弘。
山下敦弘は現在の邦画界ではトップクラスの一人であって、生まれも1976年と若い。
『リンダ リンダ リンダ』『松ヶ根乱射事件』『天然コケッコー』『もらとりあむタマ子』などはなかなかに愉しんだ作品である。
しかし北杜夫原作の『ぼくのおじさん』は、ちっとばかし緩過ぎるかな。
松田龍平は以前は「アブない男」役ばかりだったけれど、このところ緩い人間を演じる機会が多い。
もちろん龍平が選んで演じるそれぞれの役だから、「緩い」とひと言で括れるわけもなく、しっかりと役作りをして取り組んでいることは分かっているが。
『ぼくのおじさん』の中で、大きな役ではないが、寺島しのぶと宮藤官九郎が出演していて、この二人はなかなかよかった。
わたし、俳優としての宮藤官九郎が好きなのです。
『ゲゲゲの女房』なんかも、一般的には朝ドラの向井理が念頭に上がるのだろうけれど、わたしのポイント・オブ・ヴューからすれば、「向井理なんて、水木しげるじゃないのに!」となるわけで、映画の宮藤官九郎の方が遥かに水木しげるだった。

『ぼくのおじさん』には戸田恵梨香も本当にちょい役で出ているのだが、キャリアの中でかなり微妙な状況になっている戸田恵梨香が、
(いずれ山下敦弘作品に主要な役で出してほしい)というアピールだろうか。

『ぼくのおじさん』の大きな問題はヒロイン格の真木よう子であって、松田龍平が一目惚れし、ハワイまで追いかけて行くというストーリーなのだけれど、2016年公開のこの作品の彼女はデコルテから顔まで、どうも筋張った外見になっており、(う~ん、一目惚れねえ・・・)と、そりゃあ登場人物の好みはいろいろだろうけれど、やや首を傾げてしまうのである。

真木よう子は『さよなら渓谷』で主演女優賞を独占し、キャリアの絶頂を迎えたが、それは2013年。
その後、ネット上のトラブルや激やせなどネガティブな話題ばかりになり、さあ、今後どうなるのだろう。

真木よう子の話題と関係ないようであるのだけれど、市川崑作品、映画『獄門島』の坂口良子がなかなかに魅惑的で、坂口良子と言えばテレビドラマでの健康的でポジティブなイメージがとても強く、しかし『獄門島』の中ではかなり怪し気な美貌と色香を発散しているのである。
テレビドラマの坂口良子の緩やかなファンでもあったわたしだけれど、プロポーションも素晴らしく、映画で例えば谷崎潤一郎作品などに挑戦していれば、とても素敵なキャリアンの一つになっていたかもしれない。