●綾瀬はるかがターミネーターの目に涙?『義母と娘のブルース』で感涙するのは当然なのか?

末尾ルコ「女優論の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

綾瀬はるかを「嫌い」という日本人はそう多くはないと思うけれど、わたしも「嫌い」ではない。
しかし「嫌いが少ない」という表現者が必ずしも「素晴らしい」とは限らないのも真実であり、果たして今、綾瀬はるかはいかなる場所にいるのか。

子役の愁嘆場がありそうなので1回限りで見るのを止めていた『義母と娘のブルース』だが、CMスポットで「子役はもうおらず、(ドラマ上)娘は高校生に成長している」ことを知り、第7話を観てみた・

「絶体絶命大ピンチ!!娘の反抗と私の解雇!?再就職先は倒産寸前」とサブタイトルされた第7話は思いの外よくできていて、正直なところクライマックスで目頭が熱くなった。
テレビドラマで目頭が熱くなったのは沢尻エリカの『1リットルの涙』以来かどうかは定かではないが。

『義母と娘のブルース』は桜沢鈴の4コマ漫画だというのがおもしろい。
4コマ漫画という表現にもこのような可能性があるということが。
脚本は、森下佳子。
テレビドラマの『世界の中心で、愛をさけぶ』
『白夜行』『JIN 仁』などで大きな成功を収めており、映画でも野村萬斎主演の『花戦さ』の脚本を担当している。
第32回向田邦子賞、第41回日本アカデミー賞優秀脚本賞など受賞も少なからずある。
テレビドラマの『百夜行』はなかなかおもしろかった。

さて『義母と娘のブルース』だが、綾瀬はるかがターミネーターのように無表情でバリバリ仕事を片付けるキャリアウーマンという設定で、そこから来る可笑しさが当ドラマ最大の見せ場となっている。
ドラマ中の綾瀬はるかはほとんどスカート&ワイシャツ&ジャケットのビジネススーツスタイルで、その外見でのターミネーターぶりは、さすが身長があり、頬のラインもシャープな綾瀬はるかならではの役どころだ。
石原さとみや新垣結衣ではこの役は無理だろう。

『義母と娘のブルース』は、「癌で余命いくばくもないシングルファーザーとキャリアウーマンが結婚→夫の死後、娘と大きな葛藤を繰り返しながら愛情をもって育てていく」というあらすじだ。
件の第7話は、「十分に愛情を持って育ててくれていると分かっているからこそ、そんな義母の期待に応えたいからこそ頑張っているけれど、思うようになれない娘が積もり積もった感情を爆発させる」シーン、そして常に無表情の綾瀬はるかがついに涙を流してしまうシーンが見せ場となっており、設定上当然来るべき見せ場なのだけれど、それでもグッと来る上手さがあった。

グータラ(笑)店長(佐藤健)のパン屋の経営を立て直すべく奮闘するおもしろさも並行しており、久々に満足したテレビドラマ鑑賞だった。
佐藤健も『半分、青い。』よりはずっといいです。