●あの「2万5千円」の行方は~『浪人街』勝新と長門裕之の「うどん」と『時計じかけのオレンジ』アレックスの「スパゲティ」~そして「麺類」の祝祭感覚。

末尾ルコ「映画と食の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

雑誌やファイルをちょっとだけ整理しようと見ていると、1万円札が見えたのです。
(あれ、こんなところに置いていたかな)とその場所を詳しく見ると、2万5千円ほどあったんです。
(やった!これで少しは楽になる・・・)と思ったのです。

昼、仮眠から目覚めてしばらくして、それは夢だったことを知ってしまったのでした。
外は花曇りのようなお天気でした。


黒木和雄監督の『浪人街』で、とても印象に残るシーンがあって、それは長門裕之演じる「二そば麦屋」が勝新太郎演じる「赤牛弥五右衛門」に一杯のうどんを提供するシーンだ。
襤褸家の縁側らしき場所でこのやり取りは展開されるのだが、
「これは大阪(大坂)うどんだ」
「大阪(大坂)うどんか。汁だけのやつだな」
「ああ、大阪(大坂)うどんだ」
「こりゃ、旨い。本物の大阪(大坂)うどんだ」
といった、映画中の台詞通りではないのだが、だいたいこのような会話が成される。
そしてうどんを食べる勝新太郎がいいのですな。
実に美味しそうに食べる。
もちろん食べながら、わざとらしい表情などしないし、「う~ん、幸せ~~」などと言ったりはしないし、「この麺の水と小麦粉の割合は・・・」などと蘊蓄もたれない。
そして二人は概ね次のような会話をする。
「こりゃ、ホンマに旨い。ありがとさん。いくらや」
「いやもう、お金はいりまへん。そんなに旨い言うてもろうただけで十分です」

いいシーンである。
「登場人物が美味しそうに食べる」あるいは、「印象に残る飲食シーンを創る」のは一流監督の証・・・に近いことを言われる場合もあるが、おおまかには間違っていない。

実はわたしが「飲食シーン」としてすぐに年頭に浮かぶ一本が『時計じかけのオレンジ』のワンシーンであって、、「ルドヴィコ療法」の施設から出所した主人公のアレックス(マルコム・マクドゥエル)が因果応報的暴力を受けた後命からがらたどり着いた「家」はかつて自分が「ウルトラ・バイオレンス」によって襲撃し、夫婦を暴力で蹂躙し、妻を輪姦したところだった。
すぐにアレックスに気づいた家人は睡眠薬入りのワインとともにスパゲティを提供するのだが、その更に山盛りになった、おそらくミートソース、今で言う、ボロネーゼのスパゲティの美味しそうなことといったら。

「麺類」というものは、いまだワクワクしてしまいますね。
「美味しい」こと、しかも「いつでも(普通)は美味しい」ことが一番の理由でしょうが、その見た目に祝祭感覚があることも大きな理由でしょう。
日本では多くの人が、「ちらし寿司」などに祝祭感覚を抱くようですが、わたしはちらしよりも麺類だな・・・ふふふ、安くもあるし。

次のようなサイトを見つけたので、リンクしておきます。

【全国】ご当地うどん30選!讃岐うどん、伊勢うどんだけじゃない!(https://www.jalan.net/news/article/218545/