●「映画に愛された女優」と言えば、若尾文子!『週刊文春』の「シネマ特別号」で、自薦3作をも語っておりまする。

末尾ルコ「映画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

「文春砲」とかどうなんだという『週刊文春』が珍しく「シネマ特別号」という本を出していて、その中に若尾文子のインタヴューあり。
若尾文子のインタヴューはいつも愉しいのです。
単行本で出てるやつも読んだし、例えば『女優 若尾文子』とか。
これは『キネマ旬報』から出版されているけれど、若尾文子の言葉にはいつも清々しさがあるんです。
偉ぶるわけでもない、へりくだるわけでもない、刺々しさも、飾るところもまったくない。
これはひょっとしたら、「日本映画史上最も映画に愛された女優の一人」ならではの、いい意味での余裕なのかなあという気もします。
そう言えば、「誰かに心から愛された経験のある人は、生涯孤独となることはない」とも言われますね。
このフレーズにどれだけの真実が含まれているかは正直なところ、今のわたしには何とも言い難い部分はあります。
そうであれば美しいけれど、本当にそうだろうか。
そもそも「心から愛される」とはいかなるものなのか。
考えるだに、難しい問題です。
ただ少なくとも若尾文子の場合は、夫の黒川紀章には深く愛されていたのではないか、そしてそれ以上に間違いなく、「映画に愛されていた」のは間違いないのです。

「映画」だけでなく、「~に愛されていた」というフレーズ、かなりの紋切り型であるだけに、軽々に使うべきではない。
日本では若尾文子など、ごく少数の女優こそ、「映画に愛された女優」と言い表せるのだっと思います。
軽々な言葉の使い方は、「言葉自体の価値を落とす」だけでなく、「その国の文化水準自体を落とす」のですね。

若尾文子のオフィシャルサイト(http://www.wakaoayako.com/)があるのでぜひ訪ねていただきたいですね。
出演映画の紹介はずらり並んだ本数に驚愕しますし、「Gallery」をクリックしてもまだ何も出てこないのが残念ですが、トップページでいくつかのDVDと写真が出てきて、それらを少し目にするだけでも、現在の日本映画には存在しないピンと張りつめた美しさが十分感じられるはずです。

『週刊文春』の「シネマ特別号」で若尾文子は自分の出演映画すべてのDVDを持っていると語っています。
これは羨ましいですね(笑)。
レンタル店などに置いている若尾文子男出演作、テレビでよく放送する若尾文子出演作はけっこう限られたタイトルで、そうした作品以外にも膨大な映画に出演しているのだから、できるだけ鑑賞したい。
ちなみに『週刊文春』の「シネマ特別号」で若尾文子は3本の自薦作を挙げていますが、

『妻は告白する』
『祇園囃子』
『赤線地帯』

という内容です。
膨大な映画に出演している中で敢えて「3本」選んだのでしょうが、「今の若尾文子」がお好きな自らの出演作なのですから、「映画ファン必見」のみならず、「日本人必見」とすべきなのですね。