●ブルーザー・ブロディVSケビン・サリバンのプロレス試合動画から、「説得力」の問題を検証。

末尾ルコ「プロレスの話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

ブルーザー・ブロディVSケビン・サリバンという試合動画を見つけた。
これがなかなか、短くておもしろい。
ケビン・サリバンというレスラーの記憶はなかった。
そこでこのケビン・サリバンを調べてみると、もともとベビーフェイスだったが、80年代から怪奇はヒールに転身したとある。
ナチュラルなスタイルでファイとしているこの試合はベビーフェイス時代で、70年代である可能性が高いのだろう。

Bruiser Brody vs Kevin Sullivan
https://www.youtube.com/watch?v=JBhvYTYL0d8

ブルーザー・ブロディとケビン・サリバンでは体格があまりに違う。
ブロディでかい。
ケビン・サリバンの身長は、「178cm - 180cm」とされているが、となると175cm以下であることもあり得る。
ブルーザー・ブロディは「198cm」とされているが、やはりでかい。
「198」でもおかしくはないという説得力がある。
それでいて身体全体にもりもりと盛り上がるナチュラル(に見える)筋肉がついており、顔もいい。
今こうして見ても、プロレスラーとしてとてつもない逸材だったのがよく分かる。
プロレス史を振り返っても、ここまで身体バランスの取れた巨体のレスラーは思い浮かばない。
それでいて動ける。
このVSケビン・サリバンは10分もかからない短時間の試合となるが、ブロディは定石通り一定時間サリバンに攻撃させる。
しかしその攻撃はブロディのタイミングを外したりとか、要するに「弱者が強者に対する戦法」として納得できる攻撃なのである。

そこで思い出すのが、ヘヴィー転向後の藤波辰爾や長州力などがヘヴィーの巨体レスラーと試合した時の納得できない展開である。
藤波も長州も、「強者が強者に対する攻撃」を展開するのである。
スピードで撹乱するとか、相手のタイミングを外すとか、一点集中に徹するとか、そういう戦法ではなく、巨漢レスラーといきなりがっぷり四つにロックアップして、互角の力比べとか、藤波も長州もそうしたことをやっていたので好きになれなかったし、彼らが中心となっていったことにより、当時のわたしはプロレスに対する興味が薄れていった。

ブロディVSサリバンの試合構成は、サリバンの工夫を凝らした奮闘も空しく、最後はブロディの圧倒的体力を利したアルゼンチンバックブリーカーで決着がつく。
そのアルゼンチンバックブリーカーも見事なもので、背と腰を反らせるのではなく、わき腹を折り曲げるような、いかにもそれが痛そう、苦しそうなのである。
そして造形的にも実に美しく、フォトジェニックだ。
決着後に投げ捨てられ、リング上で動かなくなったサリバンの姿もいい。

ケビン・サリバンは1974年、ブルーザー・ブロディは1979年に全日本プロレスに初来日している。