●昨今の「ダサい」(?)洋画タイトルに関する問題は、日本の映画業界総体の問題でもある。

末尾ルコ「映画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

邦画であろうが洋画であろうが、「タイトル」をつける難しさはもちろん映画ファンであるわたしはよく理解できるけれど、特に洋画が、(いくら何でもこれはない)とか、(これで本当にヒットさせるつもりがあるのか?)とか、感じてしまうタイトルが多いのも事実だ。
最近になって特にお粗末なタイトルが多くなったという印象を持っている人も多いだろうが、実はそうでもなくて、昭和も戦後すぐから、「ウケた日本語タイトル」に同調するというパターンはずっと続いている。
例えば、「漢字二文字」のタイトルがやたらと多かった時期もあった。
(『哀愁』『別離』『望郷』『旅愁』・・・)
比較的記憶に新しいのが、『愛と~』的パターン。
(『愛と青春の旅立ち』『愛と喝さいの日々』『愛と哀しみの果て』・・・)
もちろんこれら作品の原題が、『Love and~』であることは、普通はない(笑)。

などというお話を始めたのは次の記事を読んだからで、「洋画タイトル」についてだけでなく、日本の映画観客動員総体を考える上でも実に興味深いのである。

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「ダサい邦題」「タレントでPR」、熱心な映画ファンが“無視”される事情

https://www.sbbit.jp/article/cont1/35768

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詳しい内容はリンク先の記事を読んでいただくとして、特に同記事の中の「映画プロデューサーのA氏」の談話とされる部分が興味深い。
少々長くなるが、とりわけ注目すべき部分を次に引用させていただいた。

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洋画の原題まで気にしている人なんて、おそらく数千人程度です。いくら“邦題がクソ”と派手にバズったところで、せいぜい上限は1万人でしょう。

映画ファンだけのけん引によって持って行けるヒットって、せいぜい興収2、3億円レベルです。

劇場がそこまでして、邦画のタイトルと同じレベルの“わかりやすさ”を求めるのは、極限まで作品の間口を広げるため


一応、『カメラを止めるな!』のケースもあります。

作品の内容を真摯に伝えるだけでは、先ほどで言うところの“1%の映画ファン”にしかリーチしないからです。トム・クルーズが来日してプロモーション稼働するならともかく、それができないなら、知名度のある日本のタレントを起用してワイドショーやネットニュースの露出を狙ったほうがいい。これを最も望んでいるのが誰かと言ったら、やはり劇場です。

強硬に配給会社を責め続けたところで、万が一、配給会社がそれに屈したら、映画ファンは自分で自分の首を締めることになる


ただ、本編に日本版主題歌を差し込んだり、吹替え版に明らかに技量が足りないタレントを起用したりするのは、作品の質に直接関わることなので本当にやめてほしい、とは思います

(『ビジネス+IT』より)

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この中で最も驚いたのが、「洋画の原題まで気にしている人なんて、おそらく数千人程度」と見積もられている部分。
(え~~~!1億人数千万の人口の中で、数千人しかいないのおおおお??)とかなり衝撃だ。
(ひょっとしておれって、数千人の中の一人)とか、ちょっと嬉しかったりして(笑)。
いやいやいや、喜んでなどいられない。
この見積もりが正しいかどうかは分からないが、日本の人口で「映画ファン数千人」であれば、それはかなり厳しい状況だ。
しかしこの記事の内容、一度や二度ではお話し尽くせないので、今後継続テーマとして取り上げていきます。