●我が母、心臓バイパス手術後闘病記45日目、ホールでの集団昼食と「刺激」の必要性。~とても滋味溢れる『喜劇 駅前番頭』、秀逸な「西瓜シーン」の色彩感覚。

末尾ルコ「母の話、映画の話題」

5月3日(金)手術後45日目
転院8日目

病室へ着く前に、病棟の真ん中にあるホールの集団昼食の中に母の姿を発見。
皆静かに食べている中、母は上機嫌で手を振り大きな声を出しそうな雰囲気ありありだったので、「病室へ行っちょくき(行ってるから)、ゆっくり食べて」と言ってわたしは病室へと向かう。
そうか、前日の理学療法士が、「そろそろ車椅子でお食事できますかね~」と言っていたのは、こういう意味だったわけだ。
他の患者と一緒の食事は母にとってどうかなと思っていたけれど、病室へ帰ってきた表情は思いの外生き生きしており、けっこうな刺激にはなっているようだ。
「刺激」って、本当に大事ですね。

この日は午前中に介助付き入浴をしてもらい、リハビリも歩行、そして日記付けなどをやったとしっかり説明。
そうしたことも普通に記憶しているのである。
それをだれが相手でもしっかりと言えるようにしていかなければ。
面会時間に2度咳き込んだけれど、本人いわく、「前日よりは楽になった」と。

・・・

『喜劇 駅前番頭』で、(映画上の)伴淳三郎の家族と淡島千景が西瓜を食べるシーンがある。
と言いますか、この『喜劇 駅前番頭』、実におもしろかったのである。
舞台は箱根。
新卒で旅館に就職した若者がフランキー堺というだけで妙に可笑しい。
フランキー堺はわたしの観た範囲では、「怪優・怪演」的役が多いもので、おどおどした新卒の大学生役というだけで既にネタのような愉しさである。
『駅前』シリーズについてもビギナーであるわたしがどうこう言えはしないけれど、これまた今までのところ観た範囲では、このシリーズは約90分間、あたかもジェットコースタームービーのように演出、登場人物たちが「作品という礫」となって、笑いを含めたような愉しみを一気に提供してくれる印象なのだが、『喜劇 駅前番頭』はもっとじっくりと俳優たちの個性や芝居を際立たせてくれて、滋味溢れるおもしろさになっていると感じた。
もちろん、どちらのパターンでも素敵な映画になるのですよ。


で、話を戻しますと、『喜劇 駅前番頭』で、(映画上の)伴淳三郎の家族と淡島千景が西瓜を食べるシーンがあるわけだけれど、とてもいいのである。
ちゃぶ台に切った西瓜をそのまま置いて、そのまま塩をかけて食べるのだけれど、やや渋い色調の室内のショットの中心線よりやや下に赤い西瓜が並んでいるのですね。
素晴らしい色彩感覚で、わたしこういうシーンが出るだけで嬉しくなるのである。
このシーンだけでなく、畳の上に登場人物が座っているショットが少なからずあって、その安定性と美しいたたずまいはそう、小津や監督作を彷彿させてくれるのです。
『喜劇 駅前番頭』、素晴らしい!