●我が母、心臓バイパス手術後、大転子部不全骨折後闘病記103日目~『獄門島』を両独中~横溝正史のお茶目なタイトル、例えば『壺中美人』『恐ろしき四月馬鹿』とか。

末尾ルコ「母の話、文学の話題」

6月30日(日)手術後103日目
転院67日目

病室で母に対して「朗読(音読)」をしていて、現在は横溝正史の『獄門島』を読んでいるというお話をしたけれど、そしてわたしは子どもの頃から特に10代の読書の芯はミステリだったと言ってもよくて、まあ今でもミステリ読んでますけど、20代くらいからは読書の芯ではなくなっているわけです。
10代まではまず何と言っても江戸川乱歩、そして夢野久作、中井英夫、けれど小栗虫太郎はあまり読んでない。
同時代の探偵小説家の作品はかなり読んでいるのだが、作品名まではよく覚えてないのですな。
そうそう、高木彬光はけっこう読んだ。
探偵神津恭介が登場するやつで、なかなかおもしろかったけれど、昨今高木彬光はあまり取り上げられませんな。
昭和の空気感が好きだったのだけど。
松本清張はほとんど読んでない。
今読めば違う印象になると思うが、10代の頃は社会派っぽいミステリにあまり興味がなかった。
あと、西村寿行も当時文庫で出ていたのは次々と読破していった。
もちろん海外ミステリもよく読んでいて、シャーロック・ホームズはもちろんのこと、ミステリファン定番のアガサ・クリスティー、エラリー・クイン、そして何と言っても、「ミステリの元祖」とも言われる、エドガー・アラン・ポウ「モルグ街の殺人」とか、「黒猫」なんかもミステリと言えますわなあ、やはり別格です、ポウは。
外国ミステリについてはまた別の機会に書くこともあるだろうけれど、わたしが国内ミステリの大家の一人である横溝正史をさほど読まなかったのは、乱歩や久作と比べると理性が勝っている印象があり、読みながら(なんじゃ、こりゃ、ギャハハ!)という愉しみが希薄だったからなのだと思う。
乱歩や久作の滅茶滅茶出鱈目ぶりを愛していたのですな、わたしは。
まあ乱歩はいわゆる「本格物」も書いているのでいつでも滅茶滅茶というわけではないが、でも何かいつでも滅茶滅茶で愉しい。
そういう愉しさが横溝正史には足りないような気がしていたのだけれど。
例えばこれまた名作の誉れ高い『本陣殺人事件』とか、あの有名なトリックも、(別にここまでやらなくても・・・)という意味では愉しいっちゃ愉しいけれど、しかし乱歩や久作の破綻ぶりとは違うのだ。

で、この度母に『獄門島』を朗読(音読)しつつ、横溝正史の著作タイトルを眺めると、少なくともタイトルは破綻しまくっておもしろそうなのがありますな。
わたしが気に入ったタイトルを並べてみよう。

『幽霊男』
『吸血蛾』
『不死蝶』
『びっくり箱殺人事件』
『真珠郎』
『壺中美人』
『花髑髏』
『恐ろしき四月馬鹿』
『怪獣男爵』
『幽霊鉄仮面』
『真珠塔・獣人魔塔』

並べてて、すごく愉しいんですけど。
『不死蝶』ですって、ぷぷぷ。
そしてあれですな、『びっくり箱殺人事件』では死にたくないですな。
『真珠郎』とか『壺中美人』いうタイトルは、「女体盛り」などのボキャブラリーと共通点を感じるし。
『恐ろしき四月馬鹿』って、どんな四月馬鹿なんだとか、『怪獣男爵』というタイトルでどんなストーリーになっているのかとか、見つけて読みたくなってしまうではないか。