末尾ルコ「母の話、健康医療・介護福祉の話題、映画の話題」

2月18日(火)手術後335日目
退院後138日目

それでは「ハードボイルドタッチ」とは何かと問われると・・・。
文学においてはアーネスト・ヘミングウェィらの「乾いた文体」といった説明をされることが多いが、実は乾いているように見えて「ウェット」なのがハードボイルドタッチなのではないだろうか。
ここで(ハードボイルドタッチとは何か?)というテーマに深入りはしない。
けれど例えばハードボイルドの雄として誰もが連想するレイモンド・チャンドラーのすべての小説に必ずしもハードボイルドタッチを蟹るわけではないし、ましてその映画化が常に心地よいハードボイルドタッチを実現しているわけでもなく、ロバート・ミッチャムやエリオット・グールドのフィリップ・マーロウが必ずしも納得できるハードボイルド探偵であるというわけでもない。
なので『エンゼル・ハート』のハードボイルドタッチはとてもとても貴重なのだし、ロマン・ポランスキーの『チャイナタウン』、そして傑作ハードボイルド『ブレードランナー』が映画史上にそそり立っているのである。


鍋に春菊と菜の花の葉を入れた。
菜の花の葉はもりもりと嵩張って(だいじょぶかな、これ・・・)と不安にならなくもなかったが、大丈夫、少し茹でるとすぐにペシャンコになり食べやすくなる。
春菊と菜の花の競演は鍋の中でインパクト抜群で、特にやはり菜の花の苦みが心地よい。
(俺も苦みを愉しめる大人になったか・・・)と殊更感慨に耽ったわけではないが。
それにしても春菊と菜の花の濃緑がいい。
菜の花の歯応えがいい。

深夜、おでんのためにゆで卵の皮を剥く。
既に完成していた茹で卵。
おでんを作る段取りも進歩してきた。
きれいに剥けて、つるりとして白身の表面が露出すると嬉しくなる。
一個だけ白身にヒビを入れてしまった。

2月14日、来客があり玄関へ出る。
近所の奥さんである。
そう言えばこの方は70歳くらいになるのだろうか。
そう考えれば若い。
花束を持って来てくれている。
豪華な植えものの花束だ。
ガーベラにも菊にも似ている。
濃いピンクと紫の花びら。
鼻の説明のプレートには、有限会社『モリヒロ園芸』による「ティアウィッチ 魔女の涙」で、「品種登録出願中」と記されてある。
後から考えればこの日はバレンタインデーだったのだが、奥さんがわたしにプレゼント・・・というわけではない。
母に、だ。
これは嬉しい。
この方、母入院中もいつも気にしてくれていて、会えば温かい言葉をかけてくれていた。
そして今回は、
「本当に元気になって!いや、それでほら、わたしが年下やき言いにくいけんど、先生(←母のこと)って、可愛いやんか」

・・・ああ、この方、母をずっと(可愛い)と思ってくれていたんだ。