たとえば「すぼらしき世界」で役所広司演じる三上を観ていて、物語が進むにつれ(この男に不幸は訪れてほしくない)という気持ちが募ってくる。それは実在の人間ではなくあくまで脚本に描かれた架空の人物を俳優が演じているのだけれど、ぼくの心はいつの間にか彼を本気で応援しているのだ。
こうした精神の動きをもたらすか否かで映画の良し悪しが決まるわけではないけれど、「マイ・インターン」のデ・ニーロにもすぐさま同様の感情を抱いた。もちろん「マイ・インターン」は「すばらしき世界」のごとき悲痛なストーリーではないにせよ。