考えてみれば、崔洋一監督が「若者向けエンターテイメント映画」を手掛けたのは初めてか。
だから普段考えられない演出をしたのかもしれない。
この作品の否定的な観方の大きな要素となっているのがCGの使い方だ。
確かに多くのアクションシーンにCGが使われている。
木の枝や崖をピョンピョン飛びまわったり、いきなり現れるサメもCGであり、どうしてもチープに見える。
ただ・・問題は「原作」との兼ね合いをどうするかだ。
リアルな描写がド迫力の白土三平作品だが、「カムイ外伝」でも超リアルな中、いきなり忍者が木の枝をピョンピョン飛びまわるのも持ち味なのだ。
「なんでこんなに飛ぶの?」というくらい無造作に飛ぶ。
そのイメージを映像に変換すると、映画版「カムイ外伝」の「ピョンピョンCG」でもそれほど遠くないのだ。
その他「忍法」の描写も原作では「荒唐無稽」そのものだ。
だから映画版を観て「なんじゃ、こりゃ」と思うようなシーンも、実は原作のイメージとそれほど遠くない。
それでも映画「カムイ外伝」が成功と言えない大きな理由は、「闇」がほとんど描かれていないことだ。
「闇」のない映画は普通つまらないし、まして「闇」のない時代劇など成立しない。
そして吉高由里子ほど闇の似合う若手女優はいないのだ。