夏の思い出は一瞬で吹っ飛び、瑛次の体は二つに折れる。
思い出の映像は真っ黒な画面に変わる。
アスファルトに膝をつき、瑛次はせき込む。
腹部に喰い込んだ拳の硬さは瑛次の人生で初めて味わうものだった。
それどころか「殴った・殴られた」の経験自体あっただろうか。
耐えがたい腹部の痛みと止まらないせき込みに苛まれながら、ほんの少し残った思考能力は(そう言えばおれの今までの人生は人を殴るような人間を上手に避け続けて来たものだな)などと心の片隅で呟いている。
(これは本当に苦しいものだな、殴られるっていうのは)
腹部だけでなくアスファルトについた膝からも痛みが伝わり始める。
「えいじちゃん、腹細え!やわらけえ!」
野太い声が暗闇に響く。
「腹細えってよ!やわらけえってよ!」

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
実際の効果には、個人差などがあるものだと思われます。