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小説 神秘アンチエイジング&エロス 265  拳 [小説 神秘アンチエイジング&エロス]

夏の思い出は一瞬で吹っ飛び、瑛次の体は二つに折れる。
思い出の映像は真っ黒な画面に変わる。
アスファルトに膝をつき、瑛次はせき込む。
腹部に喰い込んだ拳の硬さは瑛次の人生で初めて味わうものだった。
それどころか「殴った・殴られた」の経験自体あっただろうか。
耐えがたい腹部の痛みと止まらないせき込みに苛まれながら、ほんの少し残った思考能力は(そう言えばおれの今までの人生は人を殴るような人間を上手に避け続けて来たものだな)などと心の片隅で呟いている。
(これは本当に苦しいものだな、殴られるっていうのは)
腹部だけでなくアスファルトについた膝からも痛みが伝わり始める。
「えいじちゃん、腹細え!やわらけえ!」
野太い声が暗闇に響く。
「腹細えってよ!やわらけえってよ!」

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
実際の効果には、個人差などがあるものだと思われます。

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小説 神秘アンチエイジング&エロス 264 夏の想い出 [小説 神秘アンチエイジング&エロス]

「ありゃ、おまえ笑ってんのか?」
「・・・」
「あ~~!おいおい、こいつ笑ってるぞ!」
あ~~!
 何ィ!
  ホントに笑ってやがる、こいつ!
こいつ、なめてんのかあ?! 
 なめてやがる!
  やっちまおうぜ!
ぶち殺せ、この野郎!

確かに瑛次は笑っていた。
(今から夏休みだ!)と思うと自然と笑みがこみ上げるのだ。
(カブトムシを捕りに行こうか!朝から虫カゴを持って。クワガタも捕れるかもしれない。
帰りはプールで泳いで行こうか。夜は神社の夏祭りだったかなあ。もしそうなら綿菓子を買おう。ひょっとしたら聡子ちゃんが来てるかもしれない。もし来ていたら、綿菓子を買ってあげよう。そうして・・)
「ぐっ・・」
瑛次の腹部に思い痛みが走った。

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
実際の効果には、個人差などがあるものだと思われます。

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小説 神秘アンチエイジング&エロス 263 空 [小説 神秘アンチエイジング&エロス]

「さ~て、えいじちゃんをどうしてやろうか。泣けばいいというもんじゃねえよなあ。なあ!」
そうだ!
 そうそう!
  しめなきゃわからねえぜ!
「えいじちゃんがおれらにつけた心の傷をどうにかしてほしいよなあ!」
そうだ!
 深(ふけ)え心の傷ができたぜ!
  どうにかしてくれよなあ!
「おい、えいじ!傷を癒してくれよ!てめえがおれらにつけた傷をよお!」
「あの・・でも」
瑛次の脳裏には夏の抜けるような広い空が浮かんでいた。
瑛次は空を見上げ、(この夏休みは何をしようか)と心をワクワクさせていた。

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
実際の効果には、個人差などがあるものだと思われます。
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小説 神秘アンチエイジング&エロス 262 [小説 神秘アンチエイジング&エロス]

あの日の父親はそれまで見たことがないほど怖かった。
普段はあまり喋ることもなく、まして声を上げることなどまったくと言っていいほどなかった父親が顔を真っ赤にして怒鳴ったのだ。
「瑛次!どういうつもりだ、これは!」
いつものように母親にやんわりとたしなめられて終わりだと思っていた瑛次は小便を少しだけ漏らした。
大声で泣こうにも声が出なかった。
声を出すと父親に殴られそうな気さえしたのだ。
瑛次の喉にはただ何度も嗚咽が上下していた。
父親はその秋、10月に死んだ。

今の瑛次。
35歳の瑛次に小学3年生の瑛次が混入する。

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
実際の効果には、個人差などがあるものだと思われます。

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小説 神秘アンチエイジング&エロス 261 [小説 神秘アンチエイジング&エロス]

「おいおい、こいつ泣いてんじゃねえか?」
「ははは!泣いてるぜこいつ!」
「泣いてる泣いてる!」

わっはっはっはあ!
 あ~っはっはっはあ!
   ガキか、こいつは!
あ~っはっはっはあ!

実際瑛次の喉には何度も嗚咽が上下していた。
本当に泣き出すのを辛うじてこらえている状態まで来ていた。
瑛次には今の自分が大人なのか子どもなのかも曖昧になっていた。
自然と頭に上るのは、小学3年の夏休み最後の日、宿題をまったくやっていないことが父親に知られ、怒鳴りつけられたときの自分だった。

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
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小説 神秘アンチエイジング&エロス 260 声 [小説 神秘アンチエイジング&エロス]

「はあ!?」
肝心な時は大柄な男が代表になる。
「いやあの・・」
「何が違うんだよ!?違わねえだろうが、えいじ!おらあ!」
「そんなこと考えてませんって」
「どんなこと?」
「いや、あななたちを〈うざい〉とか・・」
「考えてるだろが!?」
「考えてませんよ」
「考えてるって佐莉が言っただろうが!?おれたちの仲間が言ったことを疑うのか、えいじ?」
「え、でも・・」
「おれたちの仲間を信用できねえってのか?」
「い、いや・・」
「そうだろうが、おらあ!」
「なめてませんよお・・」
半分ほど涙声になった。

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小説 神秘アンチエイジング&エロス 259 合唱 [小説 神秘アンチエイジング&エロス]

やっぱりな!
 やっぱりだぜ!
ふてえ野郎だ!
 こいつ、しめなきゃ分からないぜ!

怒声と嬌声の混合が夜の街頭で渦となり瑛次を襲う。

 こいつ、おれたちをなめてんだ!
最初からそうだぜ!
 やろうぜ!
  やろうぜ!
ただじゃすまねえぜ!

瑛次は真っ直ぐ下へ落ちる感覚のただ中にいた。
「あ、あの・・、違いますよ。そんなことありませんよ」

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小説 神秘アンチエイジング&エロス 258 佐莉 [小説 神秘アンチエイジング&エロス]

「え」
「思っただろ!?」
確かに思っていた。
そして今まさにそのことを思い出していたところだった。
混乱状態の瑛次にとって、大いに「ギクリ」とする瞬間だったのは間違いない。
「分かってるんだよ、えいじ」
「いや・・」
「あのな、えいじ」
大柄な男の声だ。
「佐莉は人の心が読めるんだよ」
「・・・・」
「お前が何考えてるか、全部分かるんだよ、な、佐莉」
「ふん、まあな」
「当ててやれよ、今えいじが何考えてるか」
「ふん、こいつさあ、おれらをやっぱり〈うぜえ〉って考えてるぜ」

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小説 神秘アンチエイジング&エロス 257 小柄な男 [小説 神秘アンチエイジング&エロス]

(5人が未来軒へ入って来たとき・・ラーメンはまだ来てなかった)
まず瑛次はそれを思い出した。
(そうだ、5人が入って来る前に他にも嫌な奴らがいた。あいつらなどうなっただろう。5人があまりに強烈なので、おれはあの連中のことをすっかり忘れていた。けれどそれと5人とどういう関係がある?別にないんじゃないか。じゃあ何だ?5人が入って来た時おれは何をした?5人が入って来たとき・・、ああ今夜は運が悪いな、と思った。けれど何もしていない。心で思っただけだ。それが「何かした」ことになるというのか?しかしこいつらが来たときにしたことなんて・・何も覚えてない。それともおれが「嫌だな」と思ったことがこいつらに分かったというのか・・?)
気がつくと細身で小柄な男が瑛次のすぐ前にいた。
「えいじお前さ、おれたちが入ったとき、<うざい、来るな>と思っただろ」

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小説 神秘アンチエイジング&エロス 256 入ったとき [小説 神秘アンチエイジング&エロス]

圧し殺したような怒鳴り声だった。
それまでとはまったく違う異常性が含まれていた。
「あ、はい・・」
半ば震える声で瑛次は返事した。
他の4人は静まり返っていた。
「なあ瑛次、まずお前、おれらがラーメン屋に入ったときどうした?」
「入ったとき?」
「入ったときだよ」
5人組が未来軒へ入って来たとき・・。

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
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