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小説 サワナミの永遠に報われぬ恋 ブログトップ
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小説 サワナミの永遠に報われぬ恋 20 軽蔑? [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]

「今、気がつきました」技。
さも「その瞬間」まで意識していなかったという未熟な芝居。
好きな対象をついからかったり馬鹿にしたりする幼児性と共通点もある。
サワナミがその技を最後に使ったのは5年くらい前だろうか。
このところすっかり使っていない。
もちろんこの技を使う者は男女を問わず実に多い。
見るたびにサワナミは、もう捨ててきた過去の自分を思い出し、気恥しくなる。
気恥しくなると同時に軽い軽蔑を覚える。
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小説 サワナミの永遠に報われぬ恋 17 ボディランゲージ  [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]

サワナミが入って来ただけでこれだけ感情が乱れる。
眼球運動だけではない。
女の行動全体が不自然になった。
体の動きが明らかにカクカクする。
まるで一瞬のうちにロボットになったようだ。
手元も定まっていない。
透明なプラスチックでできた弁当のフタを閉める手が微動している。
口元は力が入りすぎ、とがったくちばしのようになっている。
それを見てサワナミは心で苦笑した。

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小説 サワナミの永遠に報われぬ恋 16 女の眼球 [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]

女はサワナミがドアを開けて入って来た瞬間、眼球を激しく動かした。
まず眼球の色が変わり。
いや、もちろん本当に色が変わったわけではない。
色が変わったと思えるほど眼球の表情が変化したのだ。
そして眼球を右上に持って行き、すぐに左下へと運ぶ。
さらに次は右下へ行き、サワナミが店に現れてから数秒で、女の眼球は軽く3~4周した。
(なるほどな)濃厚だなと思っていたことが確信に変わった瞬間だ。
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小説 サワナミの永遠に報われぬ恋 14 弁当屋の場所 [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]

その弁当やは街の中にいくつか支店を持っていた。
女はいつも秋田町の店にいる。
秋田町はこの市の中心街へ通じる道路の周囲に広がる町だ。
中規模な商店街が道路沿いにあり、その周りは主に住宅街だ。
サワナミは普段秋田町の支店に足を運ぶのだが、帯根町の方へ行くこともある。
それは「恋」を感じるのが面倒臭いときだ。
「恋がない人生なんて」というが、日によって「恋」なんてものとはまったく関わりになりたくないときもある、少なくともサワナミはそうだ。
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小説 サワナミの永遠に報われぬ恋 13 [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]

(これまでのあらすじ 爆笑)

ストレートで、しかも容姿に恵まれていなくもない佐波奈巳(略して、サワナミ)は、
しかし「恋が成就した」という満足感を一度も持ったことがない。
恋を何度もし、恋の満足感を味わいたいと思っていなくもないサワナミだが、なぜかうまくいかないのである。
今回も弁当屋勤めの小柄な女に緩やかな「恋」を感じなくもなかったサワナミだが・・。

サワナミは弁当屋の女が自分を好きであることに確信を持っている。
それは女の目線、態度、仕草から分かる。
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小説 サワナミの永遠に報われぬ恋 12 [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]

サワナミが現実世界で女を「凌辱」することはあり得ない。
想像の世界で「凌辱」する場合でも、「100%の拒否は伴わない」。
この「100%の拒否」が伴うか否かを判断できるかどうかが
サワナミにとって大きなポイントとなるのだ、たとえ想像の世界であっても。
「100%の拒否を伴わない」というのは便宜上のレトリックであり、
おそらく語弊があるだろう。
もっと具体的な数字で示すと、
「約90~70%の同意と約10~30%の拒否」。
この数値の間でなければ
「凌辱」はしないし、
この数値の間の「凌辱」であれば、
実際は「同意」でありながら
「凌辱」の形をとり、
しかも大きな快感を伴うというのがサワナミの持論なのだ。

もちろんサワナミは
この持論を誰にも言ったことはなく、
しかもあくまで「想像の世界」だけの話。
サワナミとはまったく暇人のように思えるだろうが、
その通り、
彼はかなりの暇人なのだ。

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小説 サワナミの永遠に報われぬ恋 11 [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]

サワナミは男でストレートである。
サワナミの感覚で「魅力的」だと感じる女と出会えば、
当然性欲は湧く。
しかし性欲を達成するためだけの会話を聞くと、
どうも虫唾が走ってしまうのだ。
中年男たちが集まるとよく始める会話。
いや、中年男たちだけでなく、若い男たちもたいして変わらないんだが。
「やった」だの「やりたい」だの、そんな下卑た会話に加わったことはない。

と言っても、
サワナミが女に対して下卑た欲望を持たないというわけではない。
「魅力的」な女と接すれば、心で凌辱することもある。
もちろん絶対、実行には移さない。
そしてサワナミが心でする「凌辱」とは、
「100%の拒否は伴わない」ことも特徴なのだ。
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小説 サワナミの永遠に報われぬ恋 10 [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]

食事へ誘ってどうする。
どんな会話をする。
そう言えばサワナミは弁当屋の女とまともな会話を交わしたことがない。

「こんにちは」
「いらっしゃいませ」

「じゃ、これで」
「530円です」
「じゃ、これで」
「ありがとうございました」

これが平均的な2人の会話。

サワナミは特に女性との会話を苦手としているわけではない。
どちらかと言えば得意なほうだろう。
たいがいどんな女との会話も如才なくこなす。
しかし弁当屋の女とは会話がはずんでいるイメージがわかない。
これが困った。

サワナミはそれほど深く思考する人間ではない。
しかしあまりにくだらない会話はできないたちなのだ。

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小説・サワナミの永遠に報われぬ恋 9 [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]

弁当屋の小さな女が証券会社勤務の女のようなスーツを着て自分と歩く姿は
サワナミにとって新鮮な感覚を呼び覚ますイメージだった。
その想像が生まれると同時に、
現実味を持ったイメージとしてサワナミの中に定着し、
「あの娘に会いたいな」
と昼食どきでもないのにつぶやかせた。

(食事にでも誘ってみようか)
誘うとOKする公算はとても大きいと踏んでいた。
それは誘う気のない頃から確信となっていた。


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小説・サワナミの永遠に報われぬ恋 8 [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]

(そう言えばあの娘、どんな服を着るんだろう)
いつも弁当屋で着ている服でしか女を知らない。
そしてサワナミが思いつく女性の服をいろいろ当てはめてみても、
どれも似合うとは思えないのだ。
特にその小柄な身体にスーツを着せてみると滑稽な姿になるだろう、
そうサワナミは想像して苦笑するのだった。
(もしスーツを着たあの娘と歩いていたら・・)
(後ろから見た人には、おれが子どもにスーツを着せて歩いているように見えるだろうな)
そこまで考え、
緩んだ頬はしばらくおさまらなかった。
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