●「軍師官兵衛」で楽しいのは、中谷美紀、田中哲司らが「ここぞ」とばかりにオーバーアクトまがいの派手な演技を繰り出すシーンです。
中谷美紀、田中哲司クラスになると、いつでも大仰な演技を出せるだけの技術は持っているのだけれど、滅多に発揮させる機会はない。
例えば中谷美紀は押しも押されもせぬ日本屈指の映画女優の一人ですが、多くの映画監督は俳優たちの大仰な演技を求めません。
映画の多くは俳優たちにあくまで「自然にそこにいる」ことを要求する。
その「自然」というのはもちろんわたしたちが生活している上での「本当の自然」とはまた違ったものであることが多いけれど、かつてイタリアン・ネオリアリスモの監督たちは素人ばかりを出演者として起用した例も少なくないほどです。
そんなわけで、中谷美紀も田中哲司も十分その辺りを理解しているから、「映画ではまず求められないであろう」オーバーアクトを「大河ドラマならやってもOK!」ということでじゃんじゃん見せてくれている。
と、わたしは解釈しています。