●太鼓腹のサムソン・クツワダとマーク・ルーイン~スリーパーホールド考察。

末尾ルコ「プロレスで知性と感性を鍛えるレッスン」

かつてのプロレスにおいては、「スリーパーホールド」はバーン・ガニアやマーク・ルーインら、「特別に凄いスリーパーホールドを使う」とファンの間でしっかり了解されていたレスラーのみがフィニッシュホールドとして使える技だった。
プロレスのルールでは「首を絞める」技は禁じられていて、「スリーパーホールド」はわたしの知っている範囲では、「顎を腕で抱き込んで締める」と説明されていたが、また別の解釈もあるのかもしれない。
そうした前提があったからこそ、パンクラスの立ち上げ興行で、「首を直接締めるチョークスリーパー」がフィニッシュに使われたシーンに多くのプロレスファンは衝撃を受けたのだった。
その後数々のMMAで「チョークスリーパー」は極めて劇的なシーンを生み出してくれている。
この前のペイジ・ヴァンザントVSミシェル・ウォーターストーンもその一つだが、実はわたしにとっての「スリーパーホールド原風景」とも言えるのが、

マーク・ルーインVSサムソン・クツワダだ。

マーク・ルーインの太い腕で占められて、昨今のプロレス界では見当たらない太鼓腹のサムソン・クツワダが意識を失っていく。
それはもちろんプロレスの試合だから実際どれだけ締まっていたかはさて置くが、頑是ない少年だったわたしには大の大人が観客の前で「意識を失わされる」シーンは強烈な印象として焼き付いた。