●「『私は二歳』、『歌行燈』、『日本橋』~多様な山本富士子の世界」

末尾ルコ「映画で知性と感性を鍛えるレッスン」

最近立て続けに、『私は二歳』、『歌行燈』、『日本橋』と山本富士子主演映画を観たのであるが、もちろん山本富士子はわたしよりもずっと前の世代であり、古い映画は邦洋問わず大好きだから山本富士子の作品もけっこう観ていたのだけれど、最近観た三本でその役の幅にあらためて感服している。
『私は二歳』、『歌行燈』、『日本橋』・・・これら3作ですべてまったく違うキャラクターを演じ分けている。
『私は二歳』では、何と「普通の団地妻」!
『歌行燈』では不本意ながら芸者の世界に入ったものの、宿命の恋に身も心も焼き尽くす女。
『日本橋』では芸者の世界に慣れ親しんでいるが、他の女たちとは一線を画しながらも、薄幸な雰囲気を漂わせる女。
まあしかし、どれもこれも「現在の女優たち」ができないような役ばかり。

『私は二歳』と『日本橋』は市川崑監督で、『歌行燈』は衣笠貞之助監督。
まあまあまあ、かえすがえすも、こうした偉大な日本映画の伝統がありながら、現在のスカタン作品連発のお粗末ぶりは・・・と名画を陶酔しながらも現状に対する怒りがこみ上げるのでありんす。プンプン。