●末尾ルコ「パトリシア・ハイスミスの『キャロル』に満足し、トランプ現象でまた売れる『1984年』に舌を巻く」。

末尾ルコ「映画で知性と感性を鍛えるレッスン」

『キャロル』の原作本を買った。
未読だった。
パトリシア・ハイスミスは以前いくつかの作品を読んでいる。
どれもおもしろかった。
その後、
ミステリと分類される小説からは基本的に遠ざかった。
これは賢明な読書スタイルとは言えないかもしれないが、どうにも読む気分にならないこともあるものだ。
しかし『キャロル』は買って読む価値ありだと決定した。
映画がよかっても原作までおもしろいとは限らない。
わたしは「原作至上主義者」ではなく、原作小説よりもエキサイティングなクオリティになっている映画も多く知っている。
けれど『キャロル』は原作も持っている価値ありだと閃いた。
期待を裏切られることはなかった。

ドナルド・トランプが大統領に当選して以来、米国ではジョージ・オーウェルの『1984年』がとてもよく売れたのだという。
その内容が「トランプ政治」と酷似しているとして。
友人のフェノン(仮名)は、「トランプ大統領になる前からとうに『1984年』の世界になってるよ」と言う。
それはさて置き、視点を変えれば、『1984年』の不朽ぶりには敬服するしかない。
ではわたしは部屋の中のどこかにある『動物農場』を引っ張り出してまた読んでみようか。


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