●高山善廣、救急搬送・・・記憶に鮮やかなセーム・シュルト戦。

末尾ルコ「プロレスと格闘技の話題で知性と感性を鍛えるレッスン」

プロレスラーの高山善廣が4日の大阪・豊中ローズ文化ホール大会の試合で動けなくなって救急搬送され、頸髄損傷および変形性頸椎(けいつい)症と診断されたという報道があった。
今後の検査などによって、病名などは変わる可能性もあるという。

このところプロレスラーが重傷を負う事故が続発している件は何度も書いているが、高山善廣は現在50歳で過去に脳梗塞も患っており、普通に考えれば、「プロレスができる状態ではない」はずなのだが、インディ団体を含めたプロレス界全体にレスラーの健康を守るための統一基準を設けることなど望むべくもなく、重傷者が続出してもプロレスに対する社会的関心がそうそう高まるわけでもない。こうした「裏街道」ぶりがプロレス界の特徴の一つとなっており、そんな部分に惹かれる人たちが多いことも事実ではある。
実に魅力的なプロレスラー高山善廣にはしっかり回復してほしいけれど、どちらにしても、(いつまでリングへ上がるんだ?)という裁量はレスラー自身に任されている要素が大きく、「高齢化によるリング禍」も今後ますます懸念されるところだ。

高山善廣は総合格闘技(MMA)で戦ったレスラーの一人であり、4戦して全敗でありながら、プロレスラーとしての威信を失わなかった稀有な例の一人でもある。
いまだ語り継がれるドン・フライ戦は、前も書いたけれど、「どつき合い・しばき合い」というノリはMMAであってもプロレスであってもわたしの好みではない。
それよりも印象に残っているのはPRIDE.18で行われたセーム・シュルト戦だ。
威風堂々の入場の後、セーム・シュルトの危険極まりない打撃に正面から立ち向かい、しかし顔面へのパンチに耐え切れず巨体が崩れていく姿に「敗者の美」をわたしは感じたのである。