●今だからこそ、アントニオ猪木の「セメントの強さ」を仮説として検証してみる。その1。

末尾ルコ「プロレスと格闘技の話題で知性と感性を鍛えるレッスン」

アントニオ猪木の「強さ」。それは「プロレスラーとして」のではなく、「セメントをやれば」という意味の「強さ」に関し、現段階での私の仮説を記しておこう。
もちろん日本プロレス時代を中心に、まだまだわたしにとって未知の範囲が多くあるから、あくまで「現段階での個人的仮説」でしかないが。
ただ、プロレスと同様に、リアル格闘技もずっと観続けているわたしなりの見識はある程度の説得力をもたらしているとは思っている。

前提 プロレスルールでセメント(真剣勝負)をやった場合。

♪最盛期のジャイアント馬場VS最盛期のアントニオ猪木
 ↓
打撃と体力により、馬場の勝ち。

猪木が勝つとすれば、グラウンドに持ち込んでのサブミッションしかないが、最盛期の馬場の身体能力と下半身の安定感は容易にグランドには引き込まれないだろう。
それ以前に、体格、体力で大きく勝る馬場の本気の打撃を食えば、猪木は耐えられなかっただろう。
スタンドで猪木が勝てる要素はほぼゼロだと思う。

♪新日本プロレス時代の、アントニオ猪木VS坂口征二。
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坂口がサブミッションで勝利。
馬場VS猪木以上に、猪木に勝つ要素が見当たらない。
柔道家は打撃に弱いが、それは力道山VS木村政彦のように、レスラーがかなり体格的に勝っていることが前提だ。
坂口は猪木よりかなり大きく、猪木の打撃は素人レベルである。
猪木はパンチにせよキックにせよ、あるいはチョップにしても、一度として真剣に取り組んだ形跡は見られない。

♪1976年にモハメッド・アリVSアントニオ猪木をプロレスルールでやっていたら。
  ↓
猪木がサブミッションで勝利。
実際の試合で、あれだけ雁字搦めのルールでも、猪木はアリから有効打を喰らわなかった。
パンチだけしか武器のないボクシングとは、そういうスポーツである。
そしてあのルールでさえ、何度かアリをグラウンドへ引き込んだ。
そして猪木のショボいスライディングキックでも、脚への打撃など一切想定しないボクサー相手には十分有効なのである。