●山田姉妹、『うたコン』で「ウナ・セラ・ディ東京」を歌唱~そしてザ・ピーナッツの偉大さを再認識。

末尾ルコ「音楽の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

9月20日の『うたコン』で、山田姉妹は「ウナ・セラ・ディ東京」を歌った。
美しい歌唱だった。
今回は「ウナ・セラ・ディ東京」という歌の曲想に合わせてだろう。
いつもの超絶技巧派控え目な歌唱だった。

わたしは、「ウナ・セラ・ディ東京」という曲を知ってはいたが、ザ・ピーナッツの持ち歌だったとは知らなかった。
わたしにとってザ・ピーナッツの原体験は、映画『モスラ』の小美人なのだが、調べてみればこの作品はわたしが生まれるより以前に公開されている。
だからもちろん『モスラ』も小美人はテレビ放送で観たはずなのだが、それにしてもものの見事な浸透ぶりで、小美人がモスラを呼ぶ歌、そしてそのシーンは日本国民のほとんどが知っているのではないかという印象さえあった。
ザ・ピーナッツが当時の日本の大ポップスターとして多様極まりない活動をしていたことは事実として知っていたが、その大きさの実感はわたしにはなく、今後また彼女たちが活躍していた時代についてもいろいろと調査する楽しみができたと言える。

山田姉妹は彼女たちの大目標として、由紀さおり・安田祥子姉妹を挙げているが、NHKの番組では既に「レモンのキッス」、そして今回の「ウナ・セラ・ディ東京」を歌唱しており、そのあまりに巨大なポピュラリティは、容易に「目標」とは口に出せないだろうけれど、しかしそれでも「目標は大きな方がいい」という考えもある。
「あの時代の昭和芸能史そのもの」と言っていいであろうザ・ピーナッツのカリスマ性には太刀打ちできない部分があるにしても、山田姉妹には声楽エリートとしての超絶技巧など、ザ・ピーナッツにない強みも多くある。
オペラなどクラシックの楽曲も続けて歌っていくだろうし、童謡などを歌い継いでいくという重要な活動も本人たちは使命感を持って続けているようだ。

それはさて置き、今回の『うたコン』の「ウナ・セラ・ディ東京」歌唱は、「国内最高レベルの声楽科を優秀な成績で卒業したお嬢さん」イメージの強い山田姉妹が初めて、「日本歌謡曲的大人の色気」に挑戦した時間であるとも言える。
その歌唱をもちろんザ・ピーナッツと比べてどうこう言うべきではないが、普段は白系の清楚なドレスで登場することの多い山田姉妹がこの度はナイティでゴールドをあしらった衣装だったのも新鮮だったし、持ち前の美声に「夜の色香」を籠めようと挑む姿も初々しかった。