●昭和の隣町のある本屋にはエロ本、さらに『薔薇族』『アドン』『さぶ』が。

末尾ルコ「エロティシズムの話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

前回、五社英雄監督『女殺油地獄』と『HK変態仮面 アブノーマル・クライシス』の中における「男の股間」の強調についてお話した。
少しだけ『HK変態仮面 アブノーマル・クライシス』へのわたしなりの評価をしておくと、お下劣でありおバカであるが、好感を持って鑑賞できたというところか。
2時間弱の間、まずは間断なく笑って観ていることができた。
近年の日本のコメディ映画としては、成功している部類だろう。
もちろん常に「変態仮面」はパンティを顔面に装着し、股間は「おいなりさん」を膨らませ、背後はTバック状に喰い込んでいるので臀部の筋肉はいつだってヒクヒク動きそうである。
こうしたヴィジュアルに対する拒否反応を持つ人は多いだろうから、「鑑賞者を選ぶ」のは間違いない。
ちなみに、「変態仮面」を演じる鈴木亮平は大好きだが、こういうのは「狂気」とは言わず、「おもしろがる精神」などと言う。
しかし「おもしろがる精神」もとても大切なものだ。

「男の股間」を強調した2本の映画を観ながらふと思い出したのが、ある種の青春時代(笑)にちょいちょい足を運んでいた隣町の本屋だ。
その本屋はいわば町の魚屋や果物・野菜やと同じような店構えで、店頭には週刊誌や漫画雑誌を低くて広めの台の上に目立つように並べていた。
問題は店舗の奥の方で、そう、もちろん「エロ本がずらり」の世界である。
薄暗い本屋の奥の院で、店番をしているのはおじいさんかおばあさんだった。
もちろんこのわたしが「エロ本」などという不埒な存在に興味を持つはずもない。
しかし10代のわたし、「社会観察」の一環として、嫌々ながらもある種の熱を込めて「エロ本」の類いを立ち読みする時間が無くはなかった。
ちなみに同書店の存在を知ったのは、プロレス雑誌『月刊ゴング』『月刊プロレス』を毎月置いていた最寄りの店だったからだ。

そのようなあてどない日々の中で、ふと一般的エロ本よりもさらに奥の方を眺めていると、かなりの分量で置かれていたのが。
『薔薇族』
『アドン』
『さぶ』
(ほほう・・・)
表紙に載っているのは「女」ではなく「男のイラストのみ」である。
そう、いわゆる「ゲイ雑誌」だ。
(これも社会勉強・・・)という義務感にかられ、わたしは雑誌のページを捲ってみた。
そこには、「ふんどしのみを着用し、せつなそうに俯いている若い男」の姿が。
(なるほど、このような世界に焦がれる人たちがいるのか・・・)と、確かに「社会勉強」にはなった。
そんな昭和の、ある午後だった。