●『俺たちのプロレスVOL.9』にヴォルク・ハンのインタヴューだけでなく、神取忍とブル中野の対談では、ジャッキー佐藤戦も語られている。

末尾ルコ「プロレスと格闘技の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」


『俺たちのプロレスVOL.9』にヴォルク・ハンのインタヴューが掲載されていて嬉しくなったもので、ここは一つ「プロレスとリアル格闘技を混合し、極めて熱烈に愉しんだファイター」を選定してみようということにしてみた。
それが次の6人である。

ハーリー・レイス
アントニオ猪木
北斗晶

ヴォルク・ハン
エメリヤーエンコ・ヒョードル
ロンダ・ラウジー

この6人、エメリヤーエンコ・ヒョードルだけはプロレス的試合に一切関わらなかったが、ヴォルク・ハンは「リングス的プロレス」を最も華麗に展開したファイターであるし、UWF女子バンタム級チャンピオンとして一世を風靡したロンダ・ラウジーは、既にWWEのレスラーとして活躍している。
ヴォルク・ハンは今回『俺たちのプロレス』の中で、「初期UFCではぜひ戦いたかった」という意味の発言をしていて、ファンとしてはこれまたとても嬉しい気分になった。

わたしはずっとWOWOWと契約していて、現在は3つのチャンネル+配信サービスで、映画、テニス、さらにバレエなど極めて充実したプログラムを愉しんでいるが、以前はチャンネルも1つで、全体的にもさほど(素晴らしいな)と感じさせるだけの質量ではなかった。
なのにWOWOWと契約したきっかけは、「リングス」というよりも「ヴォルク・ハン」である。

ソ連陸軍空挺部隊に所属し、特殊部隊のコマンドサンボ教官であるという未知の格闘家であるというだけでわたしの幻想は膨張したのだが、そのファイトスタイルは想像を絶するものだった。
ヴォルク・ハンのPV(https://www.youtube.com/watch?v=384a-GU33lg
現在ではこうしたヴォルク・ハンの華麗なサブミッションは、「リングス的プロレス」の世界だからこそ的確に繰り出すことが可能だったことが分かっている。
もちろんヴォルク・ハンがリアルファイトでも恐ろしく強いのはKOKルールの試合で実証済みであるし、本来相手を「無力化・戦闘不能、時に殺害」する武器であるコマンドサンボの裏技は、リング上で披露できるものではないはずだ。
そうした「含み」も、いまだ「ヴォルク・ハン幻想消えず」の大きな因となっている。
そしてこうした「大きな幻想」は、昭和のある時期まで、プロレスファンがプロレスラーに対して持っていたものだ。
(ボクシング?あんな「殴るだけの格闘技」、プロレスラーと喧嘩したらイチコロだ!)といった具合に。

危険な技を次々と繰り出す現在の新日本プロレスをそうそう批判したくはないが、それでもレスラーたちはサービス過剰の「観客の下僕」に見えることもある。

『俺たちのプロレスVOL.9』には、神取忍とブル中野の対談も掲載されており、とても愉しく読めた。
神取にとって、女子プロレス史上最高の試合とも言えるVS北斗晶(一回目)よりもブル中野との一戦がベストマッチなのだと言う。
このあたりの「凄いレスラー同士の友情」も興味深いし、神取があのVSジャッキー佐藤を語っているのはプロレスファン必読である。