●『NHK スペシャル 人類誕生』の中の不適切な言葉、あるいは芸能人出し過ぎの問題、そして『SWITCHインタビュー』の山田洋次×蒼井優対談。

末尾ルコ「映画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

『NHK スペシャル 人類誕生』をわたしがなぜ観ているかというと和久田麻由子がナレーション担当、そして番組中何度か画面にも登場するからであるが、番組内容もまずまずおもしろい。
『NHK スペシャル 人類誕生』は3回シリーズで第3回は6月10日だけれど、テレビ欄を見れば、『高橋一生の人類誕生』と書いてあり、別に高橋一生は出なくていいけれど、というのは好みの問題ではあるが、しかしNHKは無駄にタレントを出演させるのは止めていただけないものか。
ドラマに俳優が出演するのは致し方ないとはいえ、特にeテレにもぼこぼこタレントを出演させている。
かの山口達也が女子高生らと共演していた番組もeテレだったようだが、eテレ、かつては「教育テレビ」と呼ばれていたのに、昨今(ちょっと歴史の復習を)と高校生向け歴史講座などを観ても、わけのわからないタレントが出ていてギャースカ言っているのですぐさまチャンネルを変えるとか、そんなことが多過ぎる。
基本的にドラマ以外のNHK番組は「NHK穴などだけ」でいいとわたしはいつも思うのであるが。

さてNHKには『SWITCHインタビュー 達人達』という番組があり、5月には山田洋次と蒼井優の対談もあった。
山田洋次監督は現場では非常に厳密で厳しい人のようだが、語る言葉はシンプルである。
そのシンプルさの中に当然ながら深さがあって、拝聴する人間はその中からニュアンスをくみ取る必要がある。
今回の対談でまず印象に残ったのは、「渥美清」に対する想いであり、「寅さん」のキャラクターや行動はまさしく「渥美清さんだからこそ成り立った」と山田洋次は語る。
「そんなら、おらあもう出ていくよ」と言い、本当に出ていくといった台詞や行動は、渥美清だからこそ成立するのであって、他の俳優ではこうはいかないと。
そして、「そんな渥美清の存在に救われていた」とも語った。
おもしろかったのは山田洋次の女優論的な言及だった。
彼によれば、「女優というものは、裸を見せるよりも、カメラの前で〈愛してる〉と言う方が恥ずかしく、難しいものだ」と。
(なるほど)と納得の発言だ。
山田洋次作品に漂う密かなエロティシズムはこのような繊細な認識の下に醸成されているのだなと。