●ビジネスパーソン必読!・・・とは言い難い『疲れない男・棚橋弘至が教える! 史上最強のメンタル・タフネス』感想と棚橋弘至の「女性の好み」。

末尾ルコ「プロレスの話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

『疲れない男・棚橋弘至が教える! 史上最強のメンタル・タフネス』という本を読んだのである。
これは双葉社など(笑)ではなく、PHP研究所から出版されているのである。
しかも「プロレスファン向け」というよりも、「ビジネスパーソン向け」の書籍として製作されている。
このあたりに平成日本プロレス界における棚橋弘至のバリュー感、他のレスラーたちとの「差」の一端が表れているのは間違いない。
棚橋弘至は「プロレス界のスター」というバリューだけでなく、「新日本プロレスという組織を立て直した男」としてビジネス界でも一目置かれているといったところである。

PHPのサイトを見れば、同書の「内容」として次の文章が掲載されている。

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疲れない心身を手に入れる最強の方法、それは棚橋弘至を真似することです。疲れない男が、愛を込めて「メンタル・タフネス」を語る。
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さらに「解説」としては、次の文章が載っている。

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終わらない仕事、複雑な人間関係、溢れかえる情報、解決しない課題……、一億総疲労社会では誰もが大きなストレスを抱えたまま生きている。

 私たちは疲れ切ったまま日々を過ごすしかないのだろうか。
 しかし、日本には100年に一人の逸材・棚橋弘至がいる!
 「生まれてから疲れたことがない男」の強靭なメンタルの謎を解明し、逸材流のメンタル強化術を読者に提供するために編まれたのが本書。

 仕事や人生に失敗はつきものだし、ときには自分は何も悪くないのに逆風にさらされることもあるでしょう。
 人間ですから、そのときに気持ちが萎えてしまうのは仕方がないことです。
 ただ、ずっと下を向いたままでは何も変わりません。
 どこかで気持ちを奮い立たせて、ふたたび前に向かって進んでいく必要があります。
 僕の等身大の話をすることで、メンタルの弱さを克服したい方の悩みが少しでも軽くなればいいなと思っています。――「まえがき」より抜粋

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どうです、思わず微笑んでしまうような「解説」ではないか!
そしてすぐに読了できる同書の内容をわたしなりに書けば、「スターレスラー棚橋弘至だからこそ許される内容で、普通のビジネス界の人間が書けば、〈アホか!〉と言われる部分満載」である。
そして(なるほど)と感じさせる部分は、別に棚橋でなくても言うようなことが多いけれど、それを棚橋が言うところがファンにとってはいいのだろうけどね。
例えば、

〈つらい気持ちは「心の筋肉痛だ」!〉

と棚橋は言う。
つまり、肉体に負荷を掛けて筋肉を強化するように、「つらい」気持ちは心に負荷が掛かっていることであり、心をが強くなる過程であると捉えるべきだと言う。
確かにそのような側面は大いにあるけれど、ツッコみどころ満載の大雑把さではある。
それよりも第5章の「筋トレでメンタルは強くなる」という部分の方に棚橋らしさと言うか、(おいおい、結局これかよ!)と、またしても微笑してしまうけれど、かつてプロレス・格闘技とは切っても切れない人生を送っているわたしとしてはいささか気合が入らなくもない。
さらに同書の中で一番の「問題点」と言うべき部分は第4章の、

〈女性は「社長秘書」を参考に!〉

であって、ここで棚橋は「ファッションも社長秘書っぽい服装が理想的です」とか「居酒屋でみんなが脱いだ靴をさっとそろえたり、空いたコップにビールを注いでくれたり」の女性に「グッと」くると、かなり旧態依然とした棚橋自身の「タイプの女性」について熱弁をふるっている。