末尾ルコ「母の話、健康医療・介護福祉の話題、映画と芸術の話題」

1月6日(月)手術後648日目 退院後458日目

映画『フェノミナ』のダリオ・アルジェント監督が日本で知られたのは言わずと知れた『サスペリア』で、この時の宣伝コピー
「けっしてひとりで見ないでください」は、
日本公開映画史上でも大傑作の一つでしょう。
ただわたしは『サスペリア』を一人で観たか誰かと観たかはよく覚えてない。
一人で観たかもしれないが、さほど怖かった印象は残ってない。
とてもくっきりとカラフルであることと、主演のジェシカ・ハーパーこそ『サスペリア』を際立ったホラー映画として成立させた最大要素だなと・・・これはその時ではなく比較的最近思い始めたのですけどね。
『サスペリア』が日本で大ヒット、しかも大評判となったものだから、すぐに『サスペリア2』が日本公開され、これもわたし、観に行きました。
『サスペリア2』は誰かと観たけれど、それが誰だったかは明確でない。
どうだわたしのこの記憶の曖昧さときたら。
しかし有名な話だけれど、『サスペリア2』は確かにダリオ・アルジェント作品なのだが『サスペリア』より以前にできていた映画であって、内容は『サスペリア』と何の関係もない。
こんな詐欺まがいの映画公開がかつては行われていたのですね。
今だと炎上間違いなしか。

そう言えば、『サスペリア』にはジェシカ・ハーパー、『フェノミナ』にはジェニファー・コネリーと、美女、あるいは美少女がヒロインだ。
これは「恐怖と美」は強く結びついていることを考えれば当然の選択であり、映画を観る大いなる愉しみの一つなのですね。

『フェノミナ』はスイスを舞台にし、少女連続殺人事件が起こっているが、そのヒントが「死体の頭蓋骨に湧いていた蛆虫的生物」にあると見做され、そこは「虫たちと意思疎通できる特殊能力」を持ったジェニファー・コネリーが絡んでくる。
『フェノミナ』には『サスペリア』のような色彩の洪水はないけれど、蛆虫的生物がうじうじ蠢くえずさがあるが、(こりゃもうダメだ)とまではいかない。
そこにアルジェントならではのバランス感覚がある・・・と言いたいところだけれど、人によっては頭蓋骨に蛆虫的生物がうじうじしているシーンだけで、(もうダメ)と感じるかもしれない。
ただ『フェノミナ』には客に媚びる演出は感じられず、アルジェント監督の(こんな映画を作りたい)という強い意志を感じるのであって、もちろん持ち前のセンスの力は大きいけれど、やっぱりそうねえ、『犬鳴村』なんかとは大きく異なる「地力」を初めから終わりまで愉しんだのでした。