もちろん小津安二郎の映画には一本の作品に多くの名女優が出演していることが多かったが、しかしあくまで「一人の主演+何人かの名女優が脇を固める」スタイルだ。
ハリウッドでも「二大女優が対峙」という作品は容易には思いつかない。
傑作の誉れ高いリドリー・スコット監督の『テルマ&ルイーズ』は、スーザン・サランドンとジーナ・ローランズ共演だったが、これはバディムービーであって、「対峙」というスタイルではないし、サランドンとローランズは当時のハリウッドでは、「二大女優」というほどのポジションではなかっただろう。
そういう意味でも桃井かおり&岩下志麻対峙の『疑惑』は極めて貴重な作品なのだし、初めて観た時は二人のカッコよさにワクワクした。