瑛次は首をひねっていた。
 ある新聞のエッセーに対してどうも納得できない気分だったからだ。
 エッセーは「ものぐさ老人日記」。作者は和光大名誉教授の岸田秀である。
 その日の副題にはこうあった。
 「若さへの執着 人生の価値損なう現代人」
 内容は老齢に対して嫌悪する現代人を批判し、結論としてこのように結んでいる
 「娘と姉妹に間違われて喜ぶ母親などが典型であるが、若さを求めてアンチエイジングにあせりあがく現代人は、みんな、このような虚(むな)しく惨めで耐え難く不幸な人生を送っているのである。」