ぼくは断言できる。
あわしま堂の「栗まんじゅう」を好きだったことなど一度もない。
それどころか、好きか嫌いか問われれば
「嫌いだ」と答えるかもしれない。
あの呵責のない甘さ。
とりわけ夏には堪える甘さだ。

でもなぜだろう。
月に何回か、ぼくはリビングであわしま堂の「栗まんじゅう」と対峙する。
そして口にし、
「あめえなあ~」と呟く。