●樋口可南子の妖艶な美貌、堤真一の見事な演技、しかし五社英雄監督『女殺油地獄』は、「男の股間」という観点で、『HK変態仮面 アブノーマル・クライシス』と共通する。

末尾ルコ「映画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

たまたま五社英雄監督の『女殺油地獄』と『HK変態仮面 アブノーマル・クライシス』を続けて観たのである。
『女殺油地獄』は1992年の作品で、五社英雄監督の遺作だ。
映画批評家にはさほど高く評価されない五社監督だが、わたしは彼の映画はだいたい好きである。
『女殺油地獄』は近松門左衛門の人形浄瑠璃を原作としているが、わたしは五社作品しか観てないので、他作品との比較はできない。
五社版はストーリーも「性愛、嫉妬」の要素を大きく採用しており、原作とはかなり異なったものになっているという。

五社英雄『女殺油地獄』は主演が樋口可南子、堤真一、そして藤谷美和子も出演している。

藤谷美和子と言えば、「プッツン女優」などとメディアにレッテルを貼られたことだけが原因ではなかろうが、華々しくやっていた割にはいつの間にかフェードアウトしていて、(藤谷美和子って、いたなあ~)という存在である。
藤谷美和子全盛時、わたしはさほど興味はなかったもので、(今観るとどうだろう)と興味はあったが、『女殺油地獄』は圧倒的に「樋口可南子の映画」となっており、出番もさほど多くはなく、この作品では太刀打ちはできていなかった。
現在も現役感むんむんの樋口可南子の美貌と安定感はなかなかに観応えがあり、夫が糸井重里なのはどうかと思うが、『女殺油地獄』の頃は30代中盤、現在30代中盤で樋口可南子的美貌と妖艶さを見せつけられる女優がいるかと言えば、どう考えても見当たらない。
日本映画黄金期と比較するまでもなく、90年代と比べても「現在の日本人女優陣」が手薄なことがよく分かる。
ただ、『女殺油地獄』で最も感心したのが堤真一で、「二枚目だが頭の弱いドラ息子」の役を見事に演じていた。

で、『女殺油地獄』と『HK変態仮面 アブノーマル・クライシス』では一見何の関係もなさそうだけれど、重要な共通項がある事実を発見した。
何か?
「男の股間」である。

『女殺油地獄』は堤真一の、『HK変態仮面 アブノーマル・クライシス』は鈴木亮平の、「股間」がやたらと強調される。
まあ『HK変態仮面 アブノーマル・クライシス』は鈴木亮平の「おいなりさん」と称する鈴木亮平の股間を敵にくっつけるのが必殺技である「そういう映画」なので当然だが、『女殺油地獄』でふんどし姿の堤真一の股間があそこまで映し出されるとは予想外だった。
とりわけクライマックス、堤真一の「油まみれの股間」があらゆる角度からスクリーンに炸裂していたはずだ。
「だからどうした」とツッコまれても困るが、わたしはまったく「男の股間」に興味はないけれど、興味ある方にとってはお宝のシーン続出の両作品ではある、と。