それだけではなく、『冬の華』の中で高倉健はよく一人で部屋にいるのだが、これらシーンがとてもいい。
孤独な人間…というだけでなく、あまりに重い人生の荷物を抱え込んだ人間の『重さ』がストイシズムとともに表出される。
何も言わない、表情を変えることもない、しかしそんな高倉健の佇まいから、圧倒的人生の重量が立ち上る。
こんな表現ができる俳優、確かに他にはいない。
黙っているその姿に息を呑み見入ってしまう。
何も喋らないその表情に心を持っていかれる。
そのアップの表情が一本の映画作品を決定づけ、牽引していく。