SSブログ

「中二階のある家 ある画家の話」チェーホフ短篇選 沼野充義訳 [ルコ的読書]

「すばる」2009年3月号掲載

中ニ階のある家、画家、美しい姉妹・・普通のようでいて普通でない道具立てとストーリー。
チェーホフの造形する世界は「本好き」にとって永遠の憧れだ。
「極端」を描いていないのに、「極端」が描かれている。
そして文体はひたすら繊細な弦楽器のようだ。
次の美しく意味深い文を紹介したい。

もの悲しい八月の夜だった。もの悲しいのは、すでに秋の気配が漂っていたからだ。赤紫色の雲におおわれた月が昇り、道と、その両側に広がる黒々した秋蒔きの畑をかろうじてぼうっと照らし出している。しきりに流れ星が落ちていった。
ジェーニャはぼくと並んで道を歩きながら、空に目を向けないようにしていた。落ちていく流れ星がなぜだか恐くて、見たくなかったのだ。

                「中二階のある家 ある画家の話」チェーホフ短篇選 沼野充義訳
nice!(15)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

nice! 15

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0