小説 町のはんこ屋へ行った日の話 1 [生と死のためのアート]
はんこ屋。印鑑屋。4月のある日、ぼくは必要があってはんこを作りに行った。「作りに行った」と言うのは正しくない。「作ってもらいに行った」だ。ふふふ、自分ではんこを作るわけないぜ。ぼくははんこ屋じゃないからな。はんこ屋としての人生なんて考えたこともなかった。今だって考えなけれど、はんこ屋に入った瞬間に「こんな人生もあるんだ」と世界が広がった気がした。(はんこ屋か・・)その時ぼくが感じのいい行員について思いを馳せていたかどうかなんてもう思い出せない。多分そんなこと一切頭に昇ることはなかったのだろう。はんこ屋の引き戸を開けると小さなおやじがいた。小さなワイシャツと小さなズボンの中の体はもっと小さかった。黒縁眼鏡の中にあるおやじの目には最早何の不満も何の迷いも見当たらない。ぼくはその姿を見てずいぶんと安堵した。こんな落ち着いた人間の姿をかつて想像したことがあっただろうか。
そういえば おいらのチチは自分のハンコ掘ってました
by ねこじたん (2011-04-20 09:17)
ねこじたん様
それはカッコいいですなあ♪
RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2011-04-21 00:03)