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●植木等『花のお江戸の無責任』は、いかにして加速度的に愉快で充実した映画となっているのか。 [「言葉」による革命]

●植木等『花のお江戸の無責任』は、いかにして加速度的に愉快で充実した映画となっているのか。

末尾ルコ「映画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

植木等主演のクレイジー映画の一つ、『花のお江戸の無責任』を鑑賞したが、実に楽しく気持ちのよい作品だった。
監督は山本嘉次郎、脚本は山本嘉次郎、田波靖男で、ストーリーやキャラクター設定の中には落語や歌舞伎のエピソードも交えられているらしいが、わたしはどちらについても明るくないのでその辺りはよく分からない。
もちろん落語について何も知らなくても十分に楽しめる映画となっており、しかもストーリーが進行するに従って、映画ならではの豪華な愉しみも待っているという、ワクワクする構成となっている。

父親の仇討のため江戸へ来た古屋助六(植木等)が、冒頭のシーンを観ていなければ何をしに江戸へ来ているか分からないようなポップな活躍を見せながらも、終盤には思い出したように目的に達するというポップな展開であり、もちろん映画のクラシックを踏まえた逆も盛りだくさんである。
それらギャグは非常にシンプルなものも多いが、いかにシンプルでクラシカルな逆であっても、「誰がどう演出し、誰がどうやるか」によって普遍的なおもしろさが出てくるものなのだ。

『花のお江戸の無責任』の中では、例えば主人公の植木等が背中に二つのでっかいお灸をすえられるシーンがある。
これはもちろん、お灸をすえられるのが大スターの植木等であるといこと、きっちり作られた映画の中に「でっかいお灸」がしかも「二つ」というナンセンスなシーンが出てくるという可笑しさ、そして「でっかいお灸」の「適度なでっかさ」が見事に配分されて、いまだにおもしろいシーンとして普遍のものとなっているのだと思う。
登場人物が床へ撒かれた灯油でつるつる足を滑らせるシーンも、その滑らせられ方が絶妙で、しかもやや引いたカメラで撮っているのも絶妙の配分だし、「滑らせられシーン」全体も、(もう少し観ていたい)という気持ちがある頃合いで終わる。
決して「過剰」にはならない絶妙の配分が品格に繋がっているし、そこには近年の邦画ギャグ映画やギャグドラマに多く見られるガチャガチャ忙しいカメラワークや、出演者の「変顔」をアップで抜いて笑わそうとするような安易で品のない演出はない。

『花のお江戸の無責任』は、出だしは少々チープな画を見せておき、徐々に背景に江戸時代の充実した風俗描写を絡め始め、そして後半は吉原の豪奢な遊興の様子や花魁姿の女優たちの美しい装いなどの中に主人公の植木等が常在するにあたり、映画的映像もピークを迎えることになる。
またそれらを、安定したカメラで自信満々に撮っているのが心地よさの大きな要因でもある。

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いっぷく

歌舞伎のパロディーに、落語の船徳と湯屋番をいれちゃったという作品ですね。私も歌舞伎はほぼサッパリなので、ストーリーは今もよくわかりません(汗)
私がわかったのは、「権八小紫物」をかなり意識してるなということだけです。谷啓が権八で、太夫の池内淳子が小紫といってましたから。
平井権八と小紫の話は、バナナの叩き売りの啖呵売にも出てきますよね。権八ゃ、昔の色男、それに惚れたか小紫って。梶原一騎じゃないですが、実在の人物の話と落語をごちゃまぜにしてるすごいストーリーですね。
といっても、平井権八は辻斬りをやって鈴ヶ森で刑死して、小紫もそれを知って自害するので、映画とはだいぶ違うのですが、まあストーリーは二の次で、クレージーが何をやっても当たる頃だったんでしょう。
出演者が、通常の「日本一の○○男」や「クレージー○○作戦」でもおなじみの人たちなので、それでなんとなくストーリーが追えるという感じです。
たとえば、団令子と池内淳子がマドンナ役というのは、シリーズ初期のパターンですね。それがだんだん、浜美枝と野川由美子にかわっていくんですよね。男はそのままでも、女優だけ若返りをはかるのです。若大将シリーズも、星由里子が女っぽくなりすぎたという理由で、酒井和歌子に代わってますよね。女優のほうが飽きられるのが早いのか、旬が短いのか。
「男はつらいよ」で、倍賞千恵子が全作同じ役で出演し続けたのは凄いことなんですね。

私がクレージー映画で好きなのは、「くたばれ無責任」「クレージーだよ奇想天外」「怪盗ジバコ」「クレージー黄金作戦」あたりですね。全部坪島孝監督で、「奇想天外」は谷啓主演です。
「クレージー黄金作戦」はラスベガスの大通りを止めて歌って踊るシーンがあってピークでしたが、「クレージーメキシコ大作戦」あたりから下降しましたね。
落ちた理由は、やっぱり植木等も歳をとったということなんでしょうね。終盤は加藤茶との2人主役でやっているのですが、加藤は結局植木等の後継者にはなれず、シリーズは30本目で力尽きます。

>「股」の上に「細野豪志」という具体的な人名が付いていると、生々しい図が浮かんできそう

ここまでは私も考えませんでした(笑)
またプロレスラー気分で物を言ってるな、という受け止め方でした。
野田佳彦も生々しさを思い浮かべてもらいたくてコメントしたとしたら凄いですけどね。
by いっぷく (2017-10-09 02:11) 

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