SSブログ

●シリーズ化決定か?末尾ルコによる「おもしろい」論と、その観点による「映画勝負」~『フリー・ファイヤー』VS『釣りバカ日誌 5』。 [「言葉」による革命]

●シリーズ化決定か?末尾ルコによる「おもしろい」論と、その観点による「映画勝負」~『フリー・ファイヤー』VS『釣りバカ日誌 5』。

末尾ルコ「映画と言語感覚の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」


「おもしろい」という言葉があって、しかしこの言葉も実はとても難しいのである。
「何をおもしろい」と感じるかはひとそれぞれなのであって、しかしそれ以前に、「おもしろい」という言葉で語ろうとする対象自体もひとそれぞれかなり異なっているものなのですね。
例えば「おもしろい」という言葉を狭義に使う場合はだいたい、「可笑しい・笑える」という意味で使いますね。
「あの漫才はおもしろい」とか、そんな感じで。
あるいは、「なかなかのものだ!」という意味で使うこともあります。
プロレスの道場生に対して鬼コーチの山本小鉄が、「こいつはなかなかおもしろいですよ」と言う感じですね。
さらに、「感覚的・知的にエキサイティングである」という場合に「おもしろい!」を使う場合もあります。
「バスキアの画って、おもしろい!」とかいう使い方です。
この使い方は時にスノッブな臭いを漂わせるので要注意です。
わたしが中高時代、ちょっとこんな感じで使っていたという反省もあります。
当時のわたしは、特に映画に関しては、「アート最上位」であって、自分の中で芸術映画と娯楽映画を明確に分けていて、「娯楽映画」とカテゴライズした作品は絶対に「芸術映画」の下に置くという悪癖がありました。
この点についてはまたいろいろな形でお話していきますが、現在はまずわたしの「芸術・アート」という捉え方も当時とはまったく変わっており、とりわけ映画というジャンルにおいては、芸術映画のようで単なる退屈な作品だったり、娯楽映画のはずなのに、部分的にはどう見ても「芸術的」としか言えないクオリティになっているとか、ものごとはそうそう単純ではないことを理解できていると思うのですね。
だから「おもしろい」という言葉はわたしの場合、かなり広い意味で、しかしケースバイケースで焦点を絞りながら使っています。

で、最近観た2本の映画、

『フリー・ファイヤー』はおもしろくなかったし、
『釣りバカ日誌5』はおもしろかったと言えるのです。
もちろん個人的感想ですが。

『フリー・ファイヤー』は「ノンストップ銃撃戦」という触れ込みで嫌な予感はしたけれど、オスカー女優ブリー・ラーソン目当てで鑑賞を始めたが、90分弱の時間がとても長く感じられた。
1970年代の設定だが、舞台は倉庫の中だけ(笑)、「ワンシチュエーション」&「ハイテンション」でひたすら銃撃戦に終始するのだけれど、テンポがずっと同じなのである。
ブリー・ラーソンの出番も少ない!
さらに登場する男優人がだいたい髭のおじさんで、しかも倉庫の暗がりの中での展開ばかりだから暗くて誰が誰かよく分からなくなる!

で、『釣りバカ日誌』の場合は、まずは西田敏行と三國連太郎の定番の掛け合いで(来た来た)感が盛り上がり、なぜか堤防の上に亀とともにいる鯉太郎(西田敏行の息子役の赤ん坊)が落ちるか落ちないかというサイレント時代からの伝統的サスペンス+堤防の斜面をズルズル滑って上がれないというこれまたサイレント時代からの伝統的ギャグパターンで豊かに笑っていられるのです。

というわけで、「おもしろい」という観点の末尾ルコ判定で、

『釣りバカ日誌5』が『フリー・ファイヤー』に、ブレーンバスターからの体固めで勝利!

nice!(26)  コメント(3) 
共通テーマ:アート

nice! 26

コメント 3

lequiche

この頃よく私が引用する戸田山和久先生という名大の科学哲学の教授がいるのですが、彼が某宣伝誌に連載している内容がメチャ「おもしろい」んです。
《ダイ・ハード3》に関しての解説では、《ダイ・ハード》なんて「脳みそいらない系映画」だと思っているとそれは違うといって、幾つかのシーンについての解説があるんですが、それを読むと愕然とします。字幕では飛んでしまっているニュアンスが多いのですが、つまり、たいていのよくできている映画というのは、たとえアクション映画でもふつうにストーリーをなぞるのと、その裏に大人の鑑賞にも堪えられるような意味が存在している二重構造になっているとのことです。
で、そのためには映画だけでなく、「当然知っているよね?」という古典の知識が必要であると書かれています。古典といっても必ずしも古いものではなく、ある程度人口に膾炙している作品、たとえばシェークスピアとかマイルス・デイヴィスとか。
ところが最近は、その「このくらいなら知っているはず」という一般常識レヴェルがどんどん下がってきているので、字幕を作成する際にもその常識レヴェルが見越せないから、仕方なく表面的な台詞をなぞるだけになってしまう、それは文化の共通基盤が崩壊しているからだ、というのです。
もちろん「脳みそいらない系映画」そのものも多いのですが、そうじゃないものもあるので、その見分けが必要ですね。
by lequiche (2018-06-04 01:07) 

いっぷく

日本語は表現が多様だといわれますが、「おもしろい」というひとつの言葉にいろいろな意味があって、むしろ英語のほうが「おもしろい」を意味する単語はいくつもありますね。
私は単語帳丸暗記のコメヘレ英語(come hereを発音ではなくローマ字の読み方で覚える)なので、具体的な使い方はわからないのですが、私の認識では大きく分けると「intarested in」と「comical」系があって、後者には、昔英語を教えていた担任に尋ねた記憶があるのですが、単純に面白いでは「funny」と、もう少し洒落た面白さだと「humorous」で、「ridiculous(スペル未確認 笑)」だとばかばかしい、ぐらいの違いでしょうか。まだあるかもしれませんが、とにかくそれをまた皮肉とかでひねって使うのでしょうから、英語も奥が深いですね。それに加えてエキサイティングですか。これは勉強になりました。
大阪の漫才とか新喜劇は、「ばかばかしい」に徹した面白さでしょうか。どつき漫才とか、「humorous」というニュアンスとはちょっと違いますね。東京の漫才は若干それとニュアンスが異なります。たとえば私が完成した漫才と思っているのは「昭和のいるこいる」ですが、「humorous」の「おもしろ」さがあるのではないかとおもいます。
『釣りバカ日誌5』ですか。たしか穴守稲荷駅に乙羽信子を石田えり迎えに行ったもの行き違ってしまった話と記憶しています。穴守稲荷は土手とはちょっと離れているので、堤防のシーンはまさに「堤防の斜面をズルズル滑って上がれない」笑いを入れるために作ったシーンですね。そのご指摘で改めて気が付きましたが、喜劇の「笑い」は古典的なものがベースになっていて、そうそう新基軸というのがあるわけではないですが、いつぞや私がフンガイした、「喜劇の邦画はつまらない」というコメントは、『釣りバカ日誌』に限らず映画のレビューサイトでもしばしば見る記述なのですが、ではどういうものなら面白い、それこそ「comical」なのかというのが私にはわかりません。どのへんに違いがあるのでしょうか。

>船越英二は日本刀が似合いそうですね(笑)

それだけ松居一代に対する拒絶反応が強かったということだと思いますが、それにしても日本刀とは穏やかではないですよね。それを知ってから、いったいリアルの船越英二というのはどんな人だったのだろうと興味がわきました。船越英二はたんなる大映的ボケ顔の2枚目ではなく、笑顔の奥に不満や怨念を持っている癇癪持ちの男だったのではないかという気がします。もちろん、どうであってもそれで俳優としての評価が下がるわけではなく、演技の背景を知ることで、むしろ俳優船越英二に対する関心が高まるのです。
渥美清が、実は大変神経質で、家庭内では妻子に暴言暴力をふるっていたというのは、改めて聞かなくても何となく想像つきます。船越英二も同じことをしていたのかもしれませんが、案外そのときは渥美清より怖かったのかもしれませんね。
by いっぷく (2018-06-04 04:29) 

hana2018

日本語のおもしろい・・・例えばソネブロのコメントにしても、どこにでも適当なコメントを書いている特定の方がいますが、その人の常套句のひとつがまさに「おもしろい」なんですね。
適当に済ます、受けての想像に任せるには便利な言葉のひとつではあるものの、なんといい加減で無責任なと呆れるばかり。。
前日記内に、ベルナルド・ベルトルッチ監督の「ラストエンペラー」が記載がありましたけれど。
あの作品の鑑賞にあたり、清最後の皇帝であり、満州国皇帝となった愛新覚羅溥儀の生涯。愛新覚羅家の人々、溥儀の妻となた婉容。それ以前のイギリスとのアヘン戦争の経緯等・・・当然、わかっているよねな歴史感をもって鑑賞したらおもしろいとなるものを。それをアメリカの大衆レベルに期待する方が無理と言うもの。
ラストエンペラーと深い関わりをもつ、我が日本も同じようなものでは?と言った疑問は大いにありました。
清朝中国を舞台にした映画であるのに、中国系俳優の流暢な英語の台詞・・・と言うのもハリウッド映画そのもの。
華麗で色彩豊か、ベルトルッチの映像美はじゅうぶん堪能出来たものの、その後の作品「シェルタリング・スカイ」の方が記憶に残る出来であったと思います。
by hana2018 (2018-06-04 13:07) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。