SSブログ

●この10月において『ロッキー』より満足度の高かった原田芳雄『浪人街』が、生き生きと動く勝新太郎の遺作だったとは。 [「言葉」による革命]

●この10月において『ロッキー』より満足度の高かった原田芳雄『浪人街』が、生き生きと動く勝新太郎の遺作だったとは。

末尾ルコ「映画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

数日前に『ロッキー』を観たのだけれど、いつ以来かな。
もちろんこれは、『ロッキー・ホラー・ショー』でもなければ、『山ねずみロッキーチャック』でもない。
シルベスター・スタローンが一作にして世界的スーパースターとなったあの映画『ロッキー』だ。
そう、『ロッキー』くらい一人の俳優を一気に世界のスーパースターに押し上げた映画は滅多にないのだけれど、確かにそのテーマ曲、そして片腕立てふせや複数の生卵ごっくんなど、一度鑑賞すれば刻印されることがらは山盛りで、しかもツッコミどころも満載である。
アメリカン・ニューシネマテイストも横溢しており、ホロリとさせる人情など、かなりあざといけれど、それらはまあ「心地よいあざとさ」として許容できる。

しかしどちらかと言えばわたしは映画『浪人街』の方を愉しんだ。
1990年、黒木和雄監督の『浪人街』である。
『ロッキー』と『浪人街』を比べる者などなかろうが、両作品の共通点はせいぜい「映画である」ということと「タイトルのはじめに〈ろ〉が付く」くらいか。
実は共通点など指摘し続ければいくらでもあるのだが、ここでは指摘し続けない。
ではなぜ『ロッキー』と『浪人街』を今比べているのかと言えば、2作品とも最近観(返し)たからだ。
まったく傾向の異なる映画を比べるなど愚かではあるけれど、「映画を観て、どれだけ満足したか」という観点を持つならば、比較するのもおもしろい・・・場合もある。
そしてこの場合わたしは、『ロッキー』もおもしろかったけれど、満足度において『浪人街』に軍配をあげるのである。

『浪人街』はずっと前に鑑賞していると思っていたのだが、未鑑賞だった。
人の、いや特にわたしの記憶など当てにならないものなのである。

『竜馬暗殺』で原田芳雄を坂本龍馬に据え、石橋蓮司や松田優作、そして桃井かおりで幕末をパンクに描いた黒木和雄監督だが、こちらは何度となく観ている。
そして同じく幕末を描いた『浪人街』も原田芳雄だとは知っていたけれど、驚いたのは勝新太郎が重要な役で出ていたこと。
原田芳雄と勝新太郎はわたしの中でまったく結び付かず、『浪人街』で共演しているとは驚いた。
しかもこの作品、勝新太郎の遺作となったというではないか。
『浪人街』の中の勝新太郎はとても生き生きしており、この先まだまだ何十年もOKであるという存在感で、1990年のマリファナ、コカイン所持による逮捕は結果的に銀幕の大スター勝新の晩年を大きく損ねてしまったとあらためて思った。

『浪人街』は原田芳雄、石橋蓮司、樋口可南子、杉田かおる、田中邦衛、長門裕之らも十分に魅力を発揮しており、最初から終わりまで隙なく愉しめる。
満足度が高くなるはずである。

nice!(22)  コメント(1) 

nice! 22

コメント 1

いっぷく

>しかもツッコミどころも満載である。

なるほど、心に残る作品は「ツッコミどころ」が必要なのかもしれませんね。立川談志がのど自慢の審査員で「欠点のないのが欠点」という寸評が思い出されます。
「新幹線大爆破」などは、いまだに「あそこがおかしい」という話でマニアは盛り上がるのですが、そんなもん、40年以上前の映画、高倉健が横入りで出演させろと言って急遽脚本を書き換えたものだし、ほっとけよと思いますが、その作品が好きだから突っ込むんですね。

私は原田芳雄は映画では見たことないんじゃないかとおもいます。もっぱらテレビドラマで浅丘ルリ子と何度も共演してそのたびに石坂浩二との離婚説が書き立てられていました。……と書いたところで思い出しました。『祭りの準備』だけは見ました。

>ドン・レオ・ジョナサン

全日本プロレスが、昔の名レスラーを呼ぶ企画の時、ジョナサンが呼ばれて、その時馬場がどこから聞いてきたのか、「ジョナサンは余命幾ばくもない」と言って涙したというのですが、そこから10年もしないうちに馬場の方が亡くなリ、そこからさらに20年近くジョナサンは生きたのですから、馬場は一体誰からどんな話を聞いたのか気になります。ジョナサンは不治の病を克服したのかもしれませんね。

>目の色変えてぶつかり合っている試合をまだ観たことがありません。

そうですね。いつも負けてあげているという感じでしたね。
ジョナサンを初めてみたのは、第12回ワールドリーグでした。馬場との引き分けはテレビで放送しましたが、猪木にブレーンバスターでフォール負けした試合は中継しませんでした。たぶん、猪木はそれで馬場に決勝を譲ることを納得して、だけれども馬場が勝てなかったジョナサンに猪木が完勝するのはまずいということで、テレビのないところでやったんでしょうね。普通だったら猪木対ジョナサンを中継しないのはおかしいですから。それでいて、コンビクト対大熊なんていう試合は3週連続でやってるし。
国際プロレスに来たときも、アンドレとストロング小林に負けているのですが、ストロング小林にどうして負けるのか当時から納得できませんでした。
柔道ジャケットマッチは、本当はジョナサンが勝っていたけれど、ヘーシンクの顔を立てて負けてやったという感アリアリで、ジョナサンはまだやれそうだったのに、ヘーシングのほうがヘトヘトでたてなかったですね。
オープン選手権の時は、開幕戦のセレモニーでブッチャーを一方的に倒したので、これは面白いことになると思ったのですが、レイスと因縁を作ってしまったので、ジョナサンはレイスに譲ったようになりましたね。大木金太郎は空気を読まず譲りませんでしたが(笑)
by いっぷく (2018-10-16 04:54) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。